映画情報どっとこむ ralph この度、第65回ベルリン国際映画祭で監督賞となる銀熊賞を受賞し、ポーランドのアカデミー賞であるイーグル賞で主要4部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞)を受賞した映画『君はひとりじゃない』が、7月22日(土)より、シネマート新宿、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開となります。

本作はポーランドの俊英女性監督が独創的に描く<再生>の物語。

本作の公開を記念してトークショー付きの試写会が行われました!
映画ライターの高橋諭治さん、森直人さんが登壇。

映画上映後のイベントとあって、本作の魅力を余すことなく徹底解説!訪れた一般の観客は興味津々でトークを聞いていました。

日時:7月10日(月)
場所:東宝東和試写室
登壇:高橋諭治(映画ライター)、森直人(映画ライター)

まずは一言ずつ!
高橋さん:僕は昨年の東京国際映画祭で拝見しましたが、その時はセラピーシーンの写真と原題の「BODY」という情報しかなくて何が何だか?と思っていたけれど、観たら震えるような感動を覚えたんですよ。今日はよろしくお願いします。

と熱く挨拶。一方

森さん:僕は高橋先生に教えを乞います。

と笑いを誘うご挨拶。

映画情報どっとこむ ralph 高橋さんは邦題のヒントにもなった主題曲“You’ll Never Walk Alone”について

高橋さん:これは1960年代に大ヒットした曲ですが、21世紀の今も世界中で愛されている歌です。サッカー好きの人はピンと来ると思いますが、イングランドのリバプールFCのサポーターソングです。直訳すると「君はひとりで歩かない」となりますが、自分が、自分の愛するチームの12番目の選手となって“俺たちがついているぞ”とエールを贈る歌です。劇中では、真夜中に突然ステレオが起動して流れるんですね。これは一種の心霊描写ですが、見えない誰かが「見守っているよ」というメッセージを送っているという解釈もできます。

なるほど、とばかりに観客は深く頷きました。

対して

森さん:これはホラー的な文体で作られたセラピー映画。

と指摘すると、心霊現象を用いて表現された映画、という話題で盛り上がった。

森さん:もともと映画は霊的なものと親和性が高いわけですが、人の心は超常現象で語れ、と言わんばかりの表現がされているわけです。

高橋さん:そうですね。この映画は断絶した父と娘の絆が再生する物語ですが、絆を描いたものは溢れている。俳優が涙を誘う演技をするものが多い。そればかりが映画なのか、と思うわけです。例えば、心と心のつながりは人には見えないわけですが、それを伝えるために涙を誘う演技をしますね。でもこの映画は、それらを排除して超常現象だけで描いているわけです。瞬間移動やテレパシーなどが描かれるのはホラーとかSFの分野ですよね。でもこの映画はヒューマンドラマです。

と続け、2人とも

森さん:ジャンルのコードというか、壁を突破しようとする映画が増えていると思います。日本では黒沢清監督はよくやっていますよね。

高橋さん:10何年前からやっている方はいますし、気づいている監督はたくさんいますね。

と指摘した。

映画情報どっとこむ ralph

続いて、心霊描写が散りばめられたストーリーが花開くラストシーンの指摘へ。

森さん:この奇妙な描写が面白いのは、霊的なものとリアリズムが混ざっていること。娘と父がセラピストに出会って変わる、というアウトラインですが、即物的なものに接しているリアリストな父に対して、セラピストが霊媒師と来た。最初はオーソドックスなセラピーだけど、心霊描写の仕掛けが点在している。肝となるラストシーンで、観ている側の気持ちがついていけるかどうかで反応が変わります。

と語った。続けて高橋は幽霊についての解釈を熱く語った。

高橋さん:さりげないけれど、幽霊が3回出てくるんです。その中に、死んだ母ヘレナなのではないかと思う人物がいます。私にはそう見えたけど他は違うかもしれない。その話を宣伝担当の方にしたところ、監督に確認してくれました。監督の答えは、あれがヘレナだと思った人も、思わなかった人もOK、という回答でした。監督がさりげなく散りばめたミステリーでした。納得の答えでした。正解を探す映画ではないですしね。

これには森さんも唸り、

森さん:最高の観客ですね!と感心した。

劇中、オルガが奇妙な格好をしているシーンが登場することについても興味深い指摘がされた。

森さん:楳図かずお的なことだと思いましたが、蜘蛛みたいな…

と森さんが切り出すと、

高橋さん:あれは『エクソシスト』みたいですね。思春期の少女が悪魔に取り憑かれる映画ですが、あそこから、悪魔を取り払った描写と考えられるのではないでしょうか。あの動きは、オルガの不安定な心理を描写しているのだと思います。

と続けた。

森さん:マウゴシュカ・シュモフスカ監督はドキュメンタリーを撮っていた監督ですが、ホラー映画を反転して人間ドラマとして描写したわけですね。

と言い、

高橋さん:だから新鮮なんですよね。

と監督を賞賛した。

映画情報どっとこむ ralph 映画『君はひとりじゃない

原題:BODY

物語・・・
突然、母親を失ったオルガ(ユスティナ・スワラ)とその父(ヤヌシュ・ガヨス)。オルガは心身を病んでしまいちと屋に対して心を閉ざす。ヤヌシュは喪失感を拭えず、検察官として事件現場に立つも人の死に対して何も感じなくなっていった。オルガは父を、そして自らの体を嫌悪し、日々、やせ細っていく。

父と娘の間には埋められない溝ができていた。
そんな娘を見かねた父親がセラピストのアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)の元に通わせる。オルガはそこでリハビリを行っていくが、アンナのセラピーは、普通では考えられない方法だった。

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監督:マウゴシュカ・シュモフスカ
出演:ヤヌシュ・ガヨス、マヤ・オスタシェフスカ、ユスティナ・スワラほか
2015年/ポーランド/カラー/デジタル/ポーランド語/93分/映倫区分:G指定
配給:シンカ 提供:東宝東和 
宣伝:スキップ 
後援:ポーランド文化広報センター
(C)Nowhere sp. z o.o., KinoŚwiat sp. z o. o., D 35 S. A., Mazowiecki Fundusz Filmowy 2015 all rights reserved.
     
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