マーレン・アデ監督最新作『ありがとう、トニ・エルドマン』が6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開となります。
都内で一般試写会が行われ、上映終了後には「有吉ゼミ」「幸せボンビーガール」などの放送作家として知られ雑誌「InRed」などで映画連載を持つ町山広美さんが登壇するトークイベントが行われました。 日時:6月6日(火) |
|
父親のセリフはムヒカ元大統領をイメージ!?
娘の造形について「ものすごく頑張っていて、会社の期待するものに合わせようとものすごく努力をしている。自分を殺して社会に合わせなきゃ、とその真面目さが彼女自身を苦しめている」と話し、映画全体として 町山さん:とても温かみのある映画。この監督は世界の見方をよくわかっていて、父と娘のお話しだけれども、グローバル資本主義っておかしいのでは?生き辛くなっているでは?という問いかけをうまくその中に落とし込んでいる。 と語ります。 「義務に追われてるうちに人生は終わっちまう」という父のセリフに“世界一貧しい大統領”として知られ、公の場での演説やスピーチの際に数々の名言を残してるウルグアイのムヒカ元大統領の「人は物を買う時は、お金で買っていないのです。そのお金を貯めるための人生の裂いた時間で買っているのですよ。」というムヒカ元大統領の名言に、 町山さん:多分ですけど、マーレン・アデ監督にもこの言葉が届いていたのではないか。お父さんの発言のモチーフになっているのではないかな、と思いました。こういう大きなテーマを持っていながらも、ちゃんと父と娘の話に置き換えて自分のメッセージを伝えられるってすごい!撮影時は30代だったなんて、この女性監督はスゴイなと思いました。 と興奮気味に話していた。 |
|
本作のテーマ”時間”!162分は”人が生きている自然の時間を見せる技”
町山さん:この作品は主人公が語る人生の話。冒頭では父の愛犬が亡くなって、それ以外にも“死”をイメージさせる場面がある。この監督はテーマの中に“時間”を据えているから、ただ単に長くなってしまって162分になってしまったのではなくて、始めから長い物語を作るビジョンがあったんだと思います。 と、この映画の長さについて解説。 町山さん:この映画、ファーストシーンが長いでしょ?なかなか誰もフレームインして来ない。ようやく配達の人が出てきてドアベルを鳴らしても、なかなか中から人が現れない。これは映画の紡ぎ方じゃなくて、自然な時間の流れでわざと”時間をみせる“という仕掛けなんだなと分かりました。そう見るとたくさんの仕掛けがこの作品にはあるなと思いました。 マジックアワーに撮った一番の名場面は必見! 町山さん:1テイクで、マジックアワーの時間に撮っているんだと思うのですが、あの淡い空気感の映像が素晴らしい。物語が終わることと、昔の記憶がシンクロする美しいシーンだと思います。 とマジックアワーを利用したほんの一瞬のシーンに心を捕まれたと語る。 |
|
最後に監督のマーレン・アデについて
「30代でこれだけのアイデアを貯め込んで、映画を撮っているのって本当にスゴイ人。ダメなところがほとんどなくて。プロデューサー経験はあるものの、監督作はこれがまだ3作目というので、今後も本当に楽しみです! と嬉しそうに締めくくりました。 町山さんがどの場面について話しているかは、是非6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーで! 物語・・・ 性格も正反対なふたりの関係はあまり上手くいっていない。 たまに会っても、イネスは仕事の電話ばかりして、ろくに話すこともできない。そんな娘を心配したヴィンフリートは、別人<トニ・エルドマン>となって、イネスの元に現われる。職場、レストラン、パーティー会場――神出鬼没のトニ・エルドマンの行動にイネスのイライラもつのる。 しかし、ふたりが衝突すればするほど、ふたりの仲は縮まっていく・・・。
物語・・・ 父の突然の訪問に驚くイネス。 ぎくしゃくしながらも何とか数日間を一緒に過ごし、父はドイツに帰って行った。ホッとしたのも束の間、彼女のもとに、<トニ・エルドマン>という別人になった父が現れて…。 『ありがとう、トニ・エルドマン』 6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー! |
監督・脚本:マーレン・アデ
出演:ペーター・ジモニシェック、ザンドラ・ヒュラー
2016 年 ドイツ=オーストリア 162分
(c) Komplizen Film