第74回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)受賞、第89回アカデミー賞では8部門にノミネートされ、見事、作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門受賞し、オスカーの栄光を手にした映画『ムーンライト』がいよいよ来週31日金曜日より全国公開となります。
異例の1ヶ月前倒し公開も決定し、映画ファンの期待も最高潮に高まっております。本作は、当時まだ誰もその存在を認識していなかった無名の監督による作品が、 2016年のテルライド映画祭での上映を皮切りに、圧倒的な支持を得て北米で大ヒットを記録。主なオスカー前哨戦では、最も多くの“作品賞”を受賞していました。(329部門ノミネート・158部門受賞)。 そして、最新作『淵に立つ』がカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門審査員賞を受賞された深田晃司監督が登壇してのトークイベントが行われました。 日時:3月23日(木) |
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本編上映後、満席の会場から拍手で迎えられた深田晃司監督。
早速本作の感想をきかれると 深田監督:作品の内容をあまり知らずに試写会で観たんですが、こんなにもシンプルで力強い映画とは思いませんでした。黒人の役者が出演したり、セクシャルマイノリティをテーマとして扱った作品では、今まではスパイク・リーの作品や『チョコレート・ドーナッツ』など、社会性に焦点を当てる作品が多かったと思うのですが、この作品は驚くほどにそれらの要素を排除して、当たり前のように黒人コミュニティや恋愛を描いています。 と開始早々興奮気味!また、 深田監督:物語においての“劇的な瞬間”をことごとく避けている点にも驚きを感じました。この作品はハリウッドで作られる典型的でドラマチックな展開がほとんど見られないんです。そう考えてみれば、私たちの生活も実は99%何も起きず、劇的な要素など1%あるかないかだと思うんです。でも映画はそこにフォーカスをしたがる。その矛盾を抱える作業の中、監督はシンプルな構成に徹底し、だからこそあの恐ろしくシンプルなラストシーン、誰もが身に覚えのある感情へと落とし込めたんだと思います。 と監督の演出方法についても言及。そう、この映画、ハリウッドメソッドにとらわれてない作品なのです。 |
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そして話題は、深田監督とバリー・ジェンキンス監督の関係性について移り、実は両監督は生まれた年が近く(B・ジェンキンス監督79年11月19日生まれ/深田監督80年1月5日生まれ)“同級生”であることが判明。 同世代監督の作品の世代性については 深田監督:今年のアカデミー賞は『ラ・ラ・ランド』のD・チャゼル監督(85年生まれ)といい完全に世代交代が完了しましたね。普段、世代を意識して作品を作っているわけではないのですが、『ムーンライト』に関しては“劇的なことがリアリティではないんだ”という監督の強い意思を感じました。そして、この作品が単純な少年の成長物語ではないという点で好感を持てました。成長を遂げた青年が、最後に悟ったように何かを語りだすわけではない。その点がリアリティを感じました。2時間そこらで人が大きく成長していくのは、個人的にはどこか嘘くささを感じてしまいまうので。 と絶賛。 続けてキャストの演技については、 深田監督:圧倒的に演出が上手かったですね。画面に登場している役者が全員“素晴らしい演技とはこうだ”という共通認識を持って演じているように感じました。それはナオミ・ハリスのようなスター女優でも言えることだと思います。経験豊かな役者ほど計算が働き、作品から浮いてしまいまうことが多々あるのですが、彼女は見事作品の中に自分を浸透させていたと思います。 と、監督ならではの視点で語りました。 |
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最後にコメントを求められて
深田監督:(作家の)亀井勝一郎さんの言葉で“作家は処女作へ向かって成熟する”という言葉がありましたが、長編2作目にして、この映画にはバリージェンキンス監督の想いのすべてが詰まっているように感じました。是非多くの人に劇場で観て頂きたいと思います。 と締めくくり会場を後にしました。 映画『ムーンライト』 物語・・・ そして、大人になり再会した2人。静かに語り合うなか、どんなに時が流れても忘れられずにいた想いが募る・・・ |
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
キャスト:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社
配給:ファントム・フィルム
2016/アメリカ/111分/シネマスコープ/5.1ch/R15+
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