映画情報どっとこむ ralph 今年のアカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされた映画『ある戦争』の公開を記念し、初日10月8日(土)にトークイベントを行いました。
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『偽りなき者』の脚本家として知られるトビアス・リンホルムが監督&脚本を務める本作。

アフガニスタンに駐留するデンマーク兵が直面する過酷な現実をひり付くほどにリアルな戦場の描写を交えながら描き、現代社会における「正義」の在り方を問いかけるヒューマンドラマの傑作です。

このたび開催したトークイベントには、日本国際NGO「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の谷山博史代表と、普段は現地アフガニスタンで平和教育キャンペーン等を行っている同副代表であるサビルラ・メムラワル氏がゲストとして登壇。長年現地を見続けてきた谷山代表とアフガニスタン人であるメムラワル氏に、戦争の真実と現状を、映画の感想と共に熱く語っていただきした。

日時:10月8日(土)
場所:新宿シネマカリテ
登壇:谷山博史氏(JVC代表)、
   サビルラ・メムラワル(JVCアフガニスタン事業副代表)

映画情報どっとこむ ralph 国際NGO「日本国際ボランティアセンター」(以下、JVC)アフガニスタン副代表のサビルラ・メムラワルと、1986年にJVCに参加し、現在は代表理事を務める谷山博史が登場すると、場内は大きな拍手で包まれた。

ソ連侵攻の只中にあるアフガニスタンに生まれ、常に戦争が身近にあったというサビルラ。彼は映画を

サビルラさん:今なお続くアフガニスタンの現状をよく捉えています。

と絶賛し、そこで描かれている現実について言葉を続けた。

ある戦争デンマーク兵はリアルサビルラさん:映画では、デンマーク軍、つまりは外国軍の兵士が、アフガニスタンの治安を守るために働いているという状況が描かれています。しかし、私には彼らがアフガニスタンの文化、歴史背景をよく理解しているとは思えません。劇中、デンマーク兵が怪我をした現地の女の子を助ける場面があります。彼らの行為それ自体は正しかった。だが、彼らはそれがもたらす結果について理解できていませんでした。なぜなら、その行為によって、タリバンはその家族が外国軍と繋がりがあり、スパイ行為をしているのではと疑いを持ったからです。また、主人公は敵の攻撃を受けて空爆の決断を下すが、戦闘で正しい判断をすることは容易ではありません。その結果、またしても市民の被害に繋がる。この映画は、これこそが戦争の現実、そして外国軍が駐留するということの現実だということを描いています。つまり、武力で武力を抑えるという行為自体がいかに失敗しているのかを浮かび上がらせているのです。

映画情報どっとこむ ralph サビルラさんは、幼少期に紛争の影響でアフガニスタン難民としてパキスタンに家族と移住し、15年を過ごした。彼は長い間、帰国したらアフガニスタンの国軍に入ろうと思っていたという。戦争の中で生きてきたから、自分で銃を取ることを当たり前のように考えていたのだ。友人からアフガニスタンの国軍は米軍と協力し合っているからやめたほうがいい、と諭された彼は、後に、国軍ではなく、武装勢力として米軍やソ連に対抗しようと決意を固める。そんな中、

ある戦争サビルラさん:偶然に、JVCのアフガニスタン現地代表として現地にいた谷山さんに会ったんです。そのまま、2005年に意図せずJVCの活動に参加することになりました。まだ当時は武力を信じていたので、NGOのような平和的アプローチや、谷山さんが話す“対話”の力を信頼していませんでした。だが、私の考えを変える出来事が起きました。米軍が、JVCの診療所を占拠して、勝手に医薬品を住民にばら撒いたのです。その時、谷山さんが“あなたたちは銃を持って国に入り人を殺している。そして、薬を配ることによっても人を殺している”と言った。このJVCの働きかけに米軍は謝罪し、二度と繰り返さないと断言しました。それがきっかけとなって徐々に、武力で解決できないことも対話でならできると思うようになりました。紛争のなかに生きてきて、対話や平和活動の力を信じていなかった。そんな自分が変われるのだから、他の人だって変われるはずだと伝えたくて、今の活動を行っています。

武力を信じていた過去を持つからこそ、対話の力、平和活動の重要性をいっそう感じることができるのだろう。そんなサビルラを平和への道へと導き、アフガニスタンで4年半にわたり医療支援などボランティア活動に従事した経歴を持つ谷山もまた、『ある戦争』で描かれるアフガニスタンの状況を肌で感じて知っている。

映画について、

サビルラさん:私がアフガニスタンにいた時に経験した出来事と重なることがたくさん描かれていました。外国軍による誤爆、民間人の殺傷は日常茶飯事に起きている。JVCのアフガニスタン人スタッフも、殺されたり、負傷したりしています。

と、いとも簡単に人命が奪われる、紛争地の凄惨な日常を語った。

映画情報どっとこむ ralph サビルラさん:この映画で描かれているのは“対テロ戦争”です。それは、誰が敵なのかが分からない、住民を巻き込んで闘われる戦争。ただ、主人公クラウスのように、民間人を殺したとして裁判にかけられるというケースは、実際にはあまりないのではないかと思います。ある時、JVCスタッフの母親が米軍の攻撃を受け胸と腹部に三発被弾したことがありました。私とサビルラは米軍に抗議し、謝罪を要求した。けれども、米軍の大佐の答えはこうでした。“日常茶飯事の出来事だから、そんなことはできない”。彼ははっきりそう言ったのです。そのくらい、私たちの見えないところで、日々アフガニスタンは犠牲者を生み続けています。

日本に暮らす私たちは日ごろ見過ごしがちな現実に目を向けることの大切さを訴え、同時に、戦争というものがはらむ複雑な問題について言葉を続けた。

サビルラさん:決して、被害者はアフガニスタンの市民だけではない。裁判にかけられなくても、民間人を殺した兵士は悩み、苦しむ。彼らも犠牲者なんだとつくづく感じます。出口がない、終わりがない。勝者が存在しない戦争の実態を赤裸々に語っている映画だと思いました。

映画情報どっとこむ ralph そうして、南スーダンに自衛隊を派遣しており、将来、他国の戦争に参加するかもしれない――そんな現在の日本へと話が移ると、二人とも胸に抱いている不安を吐露した。

サビルラさん:アフガニスタン人にとって、日本は“中立の国”として知られる唯一の国です。アフガニスタンが日本に期待しているのは、中立の立場において、この終わりのない戦いをとめる役割を担ってほしいということです。

と呼びかけた。

谷山さん:安保法制をそのまま運用すれば、日本は確実に戦争に巻き込まれて、戦場で人を殺し、殺されることになる。それは明らかだと私は肌で感じています。そのことがなぜ伝わらないのか。駆けつけ警護や他国軍に対する紛争地での後方支援は、政治家たちがどのように国会で説明しても机上の空論。戦場では武力行使しかないんです。日本はアフガニスタンから中立に見られてきた。長きに渡ってつみあげてきたものが一気にくずれてしまう。そうなってはなりません。

と平和への願いを口にした。

『ある戦争』が映し出す、勝敗や善悪で二分化できない、現代の戦争が持つ不条理さ。そこで描かれているのが、日本にも無縁ではない問題であるという現実。そのことを意識し、じっくりと考え、他者と対話し、理解しあうこと。その大切さを説き、平和な未来の訪れを願う二人のトークは幕を閉じました。

ある戦争

原題:KRIGEN英題:A WAR

新宿シネマカリテほか全国順次公開中

HP:ある戦争HP
TW:@aru_sensou

物語・・・

ある戦争poster正義の決断が、許されない罪を生んだ

戦場と法廷を舞台に、正義と命の尊さを問う、心揺さぶるヒューマンドラマ

アフガニスタンの平和維持のために駐留するデンマーク軍の部隊長、クラウス(ピルー・アスベック)。ある日、パトロール中にタリバンの襲撃を受け、部下を守るために、敵が攻撃していると思われる地区の空爆命令を行う。だがその結果、彼は、子どもを含む11名の罪のない民間人の命を奪ってしまう。軍法会議の為に帰国したクラウスは愛する家族に支えられながらも、罪の意識と部下を守るために「不可欠」だった決断との間で苦悩する。そして、運命の結審が訪れようとしていた…。

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監督・脚本:トビアス・リンホルム
(『偽りなき者』『光のほうへ』脚本)

出演:ピルー・アスベック『LUCY/ルーシー』『シージャック』『GHOST IN THE SHELL (原題)』/ツヴァ・ノヴォトニー『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』/ソーレン・マリン「コペンハーゲン/首相の決断」/シャルロット・ムンク/ダール・サリム

2015年 / デンマーク / デンマーク語、アラビア語 / 115分 / 日本語字幕:ブレインウッズ /DCP / カラー /シネスコ/ 5.1ch / G
後援:デンマーク大使館
配給:トランスフォーマー
© 2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

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