アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の5年ぶりの最新作『光りの墓』が3月26日(土)にシアター・イメージフォーラムにて初日を迎えました。

初日イベントとして、タイにいるアピチャッポン監督とskypeをつなぎ、観客とのQ&Aを行いました。

※skypeによるQ&Aは初回11:00の回と、16:10の回、それぞれ上映後に実施しました。

アピチャッポン初日Q&A

スクリーンにアピチャッポン監督の顔が大写しになり、スタート。この日、監督はすでに8年間ほど暮らしているというタイ・チェンマイの自宅からのQ&Aとなりました。

Q:「眠り病」を映画の題材にしたきっかけは?

監督:数年前、村でアートプロジェクトをおこなっていました。タイ国内の政治的な状況などんどん酷くなっていると感じているなか、僕自身の眠りの時間が長くなっていったのです。それは逃避願望といえるかもしれません。眠りを通して、もうひとつの現実と向きあおうとしていたとも言えます。今も、夢の中に閉じ込められているという感覚が残っています。 

Q:監督の作品はタイ国内では上映禁止になっているそうですが、自分の作品をタイの国内の人々や、自分の周りの人々に語っているのか、それとも世界の人々に対して語っているのでしょうか。その違いを意識していますか?

監督:私は今でも、個人的なものを作っていられることに、感謝していますし、驚いています。とても個人的な記憶、体験にもとづいて作っているので、それを海外でも見てもらえ、自分の作品を通して海外の人とコミュニケーションが可能になるということ、また海外の人から、違うアングルでみてもらえることに感謝しています。違いについてはよく分からないですが、結局のところ、自分のため、周囲の人のために作り続けているんだと思います。

Q:アピチャッポン監督の映画は、これまでに3本(『世紀の光』、『ブンミおじさんの森』、『光りの墓』)を見ました。「映画ってこんなに自由でいいんだ!」と感動して、今日もすごく気持ちの上ではエキサイティングして、各シーンをみたのですが、必ず気持よく眠ってしまいます。今日も寝てしまって悔しいです。ところで、これらの作品を通して言いたいことは一つなのではないかという気がするのですが、どうなんでしょうか?

監督:自分としては、各作品ごと、沢山のことを言っているつもりです。ただ、ある意味で、世界のボーダーが揺らいでいく場面、線の周りを踊ろうとしているのを描くという点では一緒だと思います。私が作るのは、とてもパーソナルな映画なので、観客がそこにつながりを感じて、見続けてくれることに喜んでいます。言われてみれば、たしかに、「記憶」について描くという共通点はあるのかもしれないですね。『世紀の光』では両親の思い出を回顧していましたし、『ブンミおじさん~』では、前世の記憶というものを扱いました。本作『光りの墓』では、古い場所から新しい転換点をみつけようとしている映画と言えますね。

Q:病院の中に出てくるピンクや青のライトについて、私はピンクにはセクシーさと優しさを、その色や映像から感じました。監督が色に込めた思い、意味を教えてください。

監督:眠っている際の脳についてリサーチした MITの研究を参考にしています。あの場面は、色の効果によって兵士たちがあたらしい記憶を捏造されている、という意味もありつつ、実は観客に対して催眠術をかけるという効果もあるようです。映画というのはポストプロダクションの段階で、色を調整するのですが、あの場面をみると、みなさんが「これは(作られた)映画なんだ」と気付いてくれるでしょう。色を操作することによって、自然ではなく、人工的な体験をしてもらうという狙いがありました。

MC:最後に、観客の皆さんへのメッセージをお願いします。

監督:僕の作品をみて、感想をシェアし続けられることが嬉しい。もし皆さまの中に、作品をつくったり、文章を書いたり、といった表現をしている方がいたら、つくることをやり続けて欲しい。映画を作っている人には、パーソナルな映画を作り続けてほしいと思います。表現をし続けることで、自分以外の人の作品をみた時に、よりコミュニケーションが深まるのだと思います。
光りの墓

天才監督アピチャッポンの最新作! 

『光りの墓』

シアター・イメージフォーラムにて絶賛公開中!ほか全国順次ロードショー

http://www.moviola.jp/api2016/haka/ 

タイ東北部。かつて学校だった仮説病院で原因不明の“眠り病”にかかった男たちが眠っている。

幾層にも重なる土地の記憶と愛の記憶。言葉にできないほど感動的!

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監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン  
光りの墓_ポスタービジュアル原題:รักที่ขอนแ
英語題:CEMETERY OF SPLENDOUR 
2015年|タイ、イギリス、フランス、ドイツ、マレーシア|122分|5.1 surround|DCP 
© Kick The Machine Films / Illuminations Films (Past Lives) / Anna Sanders Films / Geißendörfer Film-und Fernsehproduktion /Match Factory Productions / Astro Shaw (2015)

タイ語翻訳:福冨渉 
日本語字幕:間渕康子 
配給・宣伝:ムヴィオラ 
宣伝協力:boid 
   

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