町山広美『スイス・アーミー・マン』を独自解釈で大いに語った!


映画情報どっとこむ ralph 9/22公開となる『スイス・アーミー・マン』の8/31(木)に町山広美さんにご登壇頂きトークショーイベントを実施しました!

放送作家としてご活躍され、「inRed」をはじめ雑誌・新聞でコラムを執筆する町山さん。
いまだかつてない友情映画をどう見たのか!?メニーとはいったい何者なのか?
独自の解釈で大いに語り尽くしました!
日時:8月31日(木)
場所:アキバシアター
登壇:町山広美

MC:映画『スイス・アーミー・マン』ジャパンプレミアにお越しいただきありがとうございます。見終わってすぐの皆さん、どことなくあっけにとられている顔をしていますね。死体に便利機能がついているというインパクトが強い映画ですが、実はすごく脚本が練りこまれた映画なので、そのあたりを皆さんと一緒に理解を深めていければと思い、本日はトークイベントを行います。
それでは、お呼びしましょう。放送作家の町山広美さんです!!

《メニー君人形をお姫様抱っこして町山さん登壇》
映画情報どっとこむ ralph MC:早速ですが、ご覧になって率直な感想を教えて下さい。

町山さん:映画冒頭が衝撃的で、早速ピークだな!と驚いたのですが、その後も展開がものすごく面白くて、さらに最後はオナラで泣かされるのですごい映画だなと思いました。
つかみの部分でこんなに掴んだら、その先は無いんじゃないかと思ったほどでしたが、その後、違う方向で面白くなりました。
ダニエル・ラドクリフ演じる死体=主人公のメニーって名前もいいですよね。ポール・ダノ演じるハンクにメニーが言いますが、ハンクは「empty」で「nothing」なんです。空っぽな人間ハンクに対して、沢山の機能を持っている死体がメニーというのが面白いなと思いました。

MC:名前の話だと、メニー(manny)というのは男(male)と子守(nanny)を合わせていて、“子守をする男性”という意味もあるんです。まさしく、ハンクの面倒を見るドラえもんみたいな存在ですよね。
ところで、メニーくんには様々な機能がありますが、町山さんがもうひとつだけほしいと思う機能はなんですか?

町山さん:私は最近、記憶力が落ちているので、記憶してくれる機能があればいいなと思いますね。でも、劇中でメニーはハンクの子供の頃の記憶を刺激して、思い出させたりするので、そういう意味では録音や記憶機能が既にあるのかもしれませんね。

町山さん:面白いなと思ったのは、空っぽなハンクには体を動かすことはもちろん、何でも出来るんですけど死んでるメニーに「生きる」ということを教えられるんです。メニーはハンクであり、ハンクはメニーであるという構造が面白いなと思います。そして、無人島そのものがハンクだという見方もできますよね。
昔、日本に洞窟おじさんって方がいて、子供の頃に生きているのがしんどくなって、山にこもった人なんですね。50代になってから警察に保護されて、社会復帰したという、ドラマにもなった実話なんです。ハンクも漂流したのではなく、生きることがしんどくなって森に住み着いたという解釈もできるのかなと思います。

MC:無人島は本当に実存しているのか疑わしいという見方もできますよね。
町山さん:そのとおりですね。そして、この作品は、意味の重ね方や説明を省く感じも面白いですね。例えば、ハンクがオナニーをしてたら、お父さんからは「消耗するから止めろ」と言われたが、お母さんからは「すればするだけ大人になるから私に近づくわね」と言われて、母の言葉がキズとしてトラウマになってるというシーンがありました。深くは説明しないけど、母の死を匂わせるシーンでもあり、説明過多になっていない映画の作りにも感心しました。

MC:本作でのメニーの存在はイマジナリーフレンド物とは少し違う感じもしますよね。
町山さん:私は『パンズ・ラビリンス』で絶対いらないカットがあると思っていて、いつかギレルモ監督に会ったら言いたいなと思ってるんですが、主人公の少女がパン(牧神)とずっと話しているんだけど、ラスト近くで実はいないってカットがあるんです。誰も居ないところに話してるカット。そんなカットはいらない!それに対し、本作は潔いです!!
あと、メニーはハンクが人力で動かすことで成立していて、ダニエルズ監督による仮装大賞を見ている気もしました。「ピンポン」という仮装大賞の名作だったり、日本の伝統・二人羽織りを思い出しました。
そして、ポール・ダノもダニエル・ラドクリフも10歳位から子役として活動してるんですね。アイデンティティが確立する前に別の人間を演じるのは異常なことだと思うんです。そんな二人が本作でこういう役をやってるのは感動的です。



映画情報どっとこむ ralph MC:マンチェスター・オーケストラによる音楽も印象的ですね。ボディパーカッションや声で構成されている音楽が全編で使われ、ラストシーンの曲だけは楽器を使ってるんです。

町山さん:ハンクの世界には他者がいないんです。サラになったりメニーになったりしないと理解できない。それが冒険を通じて他者のことが分かるようになった。そういう意味でのラストシーンの音楽かもしれませんね。ちなみにマンチェスター・オーケストラなのに2人組なんですよね。
監督のサイトでは、彼らが手掛けたマンチェスター・オーケストラのMVやショートフィルムが閲覧できて、それらの作品の中でも体の動きの面白さを作るとともに、親から受けたキズを克服するというモチーフをずっとやってるんです。相手がいることの意味を実感してるんでしょうね。
MC:本作でダニエルズ監督はサンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞したり、ファンタスティック系の映画祭でも高評価なんですよ。
町山さん:男二人で作ってるから下ネタにもこだわりがあるのかなと思いました。オナニーやキスの気持ちを語るシーンが、あまりにもロマンチックで、その表現初めて聞いたな!みたいな。そんなに爽やかに語るのか!と印象的でした。

MC:ラドクリフにインタビューをした時、メニーはゾンビか死体かという質問が多くあって、ラドクリフはゾンビ映画を殆ど見たこと無いって答えてました。
町山さん:日本では、落語で死んだ人が動く話とかがあるけど、イギリス人の彼にとっては不思議なのかもしれませんね。

町山さん:オナラの意味も面白かったです。自分でオナラしたら気になって嗅いじゃったりするのに、人のオナラは何で嫌なんだろうと考えました。自己と他者との違いということだろうけど、それを表現するのにオナラを選んだ面白さを感じました。


「スイスアーミーマン」
原題:Swiss Army Man
公式サイト:sam-movie.jp

物語・・・
無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決してその死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせて大切な人がいる故郷に帰ることを約束する。果たして2人は無事に家へとたどり着くことができるのか―!?


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監督・脚本:ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン(ダニエルズ)
出演:ダニエル・ラドクリフ、ポール・ダノ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、
提供:ポニーキャニオン/カルチュア・パブリッシャーズ 配給:ポニーキャニオン 宣伝:スキップ 
2016年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/97分/映倫区分:G指定

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