公開直前!佐々木敦、山崎まどか が語る『ありがとう、トニ・エルドマン』


映画情報どっとこむ ralph マーレン・アデ監督最新作『ありがとう、トニ・エルドマン』 が6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開となります。

本作の公開直前、6月18日(日)に佐々木敦さん(批評家)と山崎まどかさん(コラム ニスト・翻訳家)によるトークイベントを行いました。

各国の有力誌がこぞって 2016 年の映画ベスト1に選んだのは、『ムーンライト』や『ラ・ラ・ラン ド』、『メッセージ』でもなく、『ありがとう、トニ・エルドマン』だった。ワールドプレミアとなったカンヌ国 際映画祭で大きな話題となると、アカデミー賞ノミネートをはじめ各国で40を超える賞を受賞。 既に公開されたドイツ、フランスでは異例の大ヒットを記録。また、アメリカ公開の際に本作を観て惚れ込んだジャック・ニコルソンの猛プッシュにより、自身を主演に据えたハリウッド・リメイク が決定するなど、公開を前に話題が沸騰している!

池袋で行われたトークイベントでは、たっぷり 1 時間半『ありがとう、トニ・エルドマン』の楽しみ方についてのガイドを、佐々木敦さん と山崎まどかさんに語って頂きました。

日時:6月18日(日)
会場:池袋コミュニティカレッジ
登壇:佐々木敦さん(批評家)、山崎まどかさん(コラムニスト・翻訳家)

映画情報どっとこむ ralph 本作について、どこに興味を持ったのかという話から始まったトークイベント。
山崎さん:まず、 カンヌがそんなに好きではない。そしてやっぱり 162 分という時間はやっぱり長いなぁと考えてしまいました。あと、もしこれが日本映画だとし て西田敏行、江角マキコ主演とかだったら走って逃げるとこだった(笑)。あと個人的にはコメディ映画は 85 分まで、と思っていてその長 さを超えるとやっぱり間延びした感じや面白さが半減する気がして…。その時間の倍あるコメディとは何なのか、と。だから観る前にたくさん の障壁があったんです。でも、世界的に評価が高い理由についてどうしてなのか気になって見たら、もう時間なんて全く感じさせない、 3 時間でも 4 時間でも観ていられると思いましたね。

と話す山崎さん。それに対して

佐々木さん:この映画は不思議な時間の感じさせかたをする映画。一言で説明をすると、悪ふざけが好きな父が、出来る娘の邪魔をするっていう…それだけなんだよね。でもそれだけだ とやっぱりわかり辛い。どうやってこの長さで、そのお話を進めるのかは体感しないと分からない部分が多いと思う。

と、162 分という長さの必要性について語った。では、長さも含め、この映画は何がポイントになってくるのだろうか?

佐々木さん:監督は元々プロデューサー業をやっていてポルトガルの監督ミゲル・ゴメズの『熱波』やドイツに限らずヨーロッパ圏の映画に携 わっている。それもあってかヨーロッパの現状の描き方がとてもさり げなくて上手い。この作品はドイツ映画ですけど、ほとんど舞台 はルーマニアのブカレストなんですよね。

と本作の監督マーレン・ アデについて説明する佐々木さん。ご自身もドイツには度々仕事で訪れることがあると話し

佐々木さん:ドイツという国は独特なテンポが ある。他国の笑いとは少しトーンが違うんですよね」と自身の 体験を語る。それについて山崎さんは「そうですよね、独特で、 オフビート感っていうのともまた違うんですよね。

とこの映画の 持つ独特な雰囲気について意見を交わしていた。

映画情報どっとこむ ralph 映画の冒頭について

山崎さん:この映画はファーストシーンから人を不安にさせるんですよ(笑)宅配のお兄さんがやって来て、中から中年の男性が出てきたと思ったら、その人が兄弟を呼びにいく振りをして、バレバレの変装をして再度現れる。その時に自分を<トニ>と言うんだけ れど、その<トニ>について、それが誰なのかがだいぶあとにならないと分からないんですよね。どうしてあの変装をするのか、それは後になって意味が分かってくる。観客を置いてけぼりにすることはなくて、「これは一体何なんだろう?」という疑問を抱いているう ちに映画の中にのめり込ませてしまうんですよね。

そして・・・

佐々木さん:舞台であるブカ レストはEU諸国のどこよりも労働力が安いのだろうと思う。イネスの住む家から一歩外に出れば、さりげなくルーマニアの現状が映し出 されるんですよ、押しつけがましくない感じで。だから父と娘の話ではあるけれども、決してそれだけの話じゃなくて、その 2 人に関係す る場所は人の描写も精密に練られているんです。

山崎さん:最近の映画は特に、語りたいメッセージ性を強く出し過ぎている作品が多いような気がします。社会派な映画だと特に。去年『ありがとう、 トニ・エルドマン』が大絶賛されたカンヌでは、ケン・ローチ監督の『私はダニエル・ブレイク』がパルムドールを獲りましたね。あの作品もすごく 良かった。ただ、下馬評や現地での絶大な人気に対して『ありがとう、トニ・エルドマン』が何も取らなかったことについての不満もあがったそ うで「カンヌは金を鉛に変えた」とも言われたそうです。そこまで人気だったどうして、と考えると最近の映画界の傾向はメッセージ性がわかり やすくないと受け入れてもらえないのかな、と思ってしまいますよね。

と映画界を巡る現状について山崎さんが解説した。

佐々木さん:『あ りがとう、トニ・エルドマン』にもメッセージはもちろんある。けれどもそれを分かりやすく表立って出すのではなく、映画を観終わってから ジワジワと感じさせるということが、この映画のすごいところ」と、業界に生まれた新星の社会的評価とは異なる、本当の意味で評価さ れたポイントについて語った。

映画情報どっとこむ ralph 最後に・・・
佐々木さん:色々喋りましたが…とどのつまりは面白んで、純粋に見て欲しい。観終わったら“愛は不毛じゃない” ってキャッチコピーにぐっくるはず。

と語った。

山崎さん:観れば、この映画の邦題に“ありがとう”が名付けられた意味が分かると思います。

と今日の参加者に話かけた。




物語・・・
悪ふざけが大好きな父・ヴィンフリートは、コンサルタント会社で働く娘・イネスとあまり上手くいっていない。たまに会っても、
仕事の電話ばかりして、ろくに話すこともできない。そんな娘を心配したヴィンフリートは、愛犬の死をきっかけに、彼女が働くブカレストを訪れることにする。

父の突然の訪問に驚くイネス。

ぎくしゃくしながらも何とか数日間を一緒に過ごし、父はドイツに帰って行った。ホッとしたのも束の間、彼女のもとに、<トニ・エルドマン>という別人になった父が現れて…。


『ありがとう、トニ・エルドマン』


6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

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監督・脚本:マーレン・アデ
出演:ペーター・ジモニシェック、ザンドラ・ヒュラー
2016 年 ドイツ=オーストリア 162分
(c) Komplizen Film
    
    
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