高橋明也 x 藤原えりみトークイベント『グレート・ミュージアム』


映画情報どっとこむ TJ この度、ウィーン美術史美術館の創立120周年目の節目に行われた大改装を通し、美術館の裏側に迫ったドキュメンタリー映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』が11/26より公開中。
三菱一号館美術館館長の高橋明也さん、美術ジャーナリストの藤原えりみさんをゲストに、ヒューマントラストシネマ有楽町トークイベントが行われました。
gm_event_1206 日時:12/6(火)
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町
登壇:高橋明也(三菱一号館美術館館長)、藤原えりみ(美術ジャーナリスト)

映画情報どっとこむ TJ 藤原さん:私はいま改めてスクリーンで拝見して、2回目なんですが、細かなところとか気がつくところが違いましたね。

高橋さん:そうですね、私も最初DVDで見て、その後にスクリーンで見たんですが、当たり前だけど全然違いますね。

藤原さん:キュレーターとしてオルセー美術館で働いてらして、今は三菱一号館美術館の館長をしてらっしゃる高橋さんがこの映画をどのようにご覧になったのか、感想を教えてください。

高橋さん:変わった映画だなと(笑)ニコラ・フィリベールの『パリ・ルーヴル美術館の秘密』がまずあって、その後にも色々と美術館を舞台にした映画があり、『ナショナル・ギャラリー英国の至宝』や『みんなのアムステルダム国立美術館へ』などがあった後で、ウィーン美術史美術館が出てきて「さて、どうだろうか」と思ったんですが、かなり変わってるなというのが印象ですね。

藤原さん:それは美術館として?それとも映画としてですか?

高橋さん:それは両方ですね。ウィーンはヨーロッパの中でも伝統と格式がある地なので、一味違いますね。オルセー美術館にいた頃でも、ルーヴル美術館で働いている人ですら、笑いながら「ウィーンだからね」って、みんなが言ってました。

藤原:映画の中でもスタッフが言ってましたが、神聖ローマ帝国を治めてきたハプスブルグ家の遺産が彼らにとって必ずしもポジティブな意味を持っているわけではないというのを、この映画がきちんと押さえていて面白いなと思いました。

高橋さん:この映画がウィーンでヒットしたのは面白いし、よくわかります。

藤原さん:ある意味ではクリティカルだし、アイロニカル。私からすると、劇中で新しいロゴを一つとっても、ロゴなのに気品とか威厳だとか言っている人たちがいましたが、この人たちの感覚がよくわからない(笑)。

高橋さん:常に(ハプスブルグ家)を背負ってるんだろうなって思いますよね、そこまで意識しなくても。

藤原さん:この映画の特徴でもありますが、作品より働いている人をちゃんとじっくり捉えている。修復の人たちがたくさんいて、その人たちが働くセクションがきちんとある。

映画情報どっとこむ TJ 高橋さん:普通の日本の美術館はなかなか揃えていないですね。

藤原さん:バックヤードとして、アメリカやヨーロッパの美術館と日本の美術館との大きな違いですね。作品は収蔵されたら終わりでなく、メンテナンスも大事な仕事です。

高橋さん:海外は学芸員の人数は少なくても、資料修復やパブリシスト、マネージメントなどは人が多いです。日本ではお客様係はボランティや外注ですからね。向こうはきちんと雇われていてすごいなと思います。

藤原さん:美術史をちょっとかじれば、ウィーン美術史美術館はルーブル美術館などと並ぶヨーロッパの歴史を担う美術館だとわかるのですが、日本では一般の人々にはあまり広く知られてない印象ですよね。

高橋さん:近代はクリムトやエゴン・シーレがいますが、オーストリアって国民的な画家の存在がない。

藤原さん:ブリューゲルは正式に言えばネーデルランドなのでハプスブルク領の画家ではあるのですが、今のオーストリアのエリアでいうと違いますよね

高橋さん:(ウィーン美術史美術館は)自然に出来上がったというよりかは、ある文化体系の博物学的な展示場みたいなたなイメージがありますね。

藤原さん:非常に複雑で、幾つかの美術館が複合的にウィーン美術史美術館となっています。21世紀なのに「カイザー」とか「皇帝」とか名前を今でもつけるんだなと(笑)

高橋さん:フランスでは考えられないですね。

藤原さん:作品がスーッと撮影されていて見切れていたり、きちんと見えないシーンも多いのですね。例えばティツィアーノが描いた「イザベラの肖像」。彼女はレオナルド・ダヴィンチに描いてほしかったけど描いてもらえなかったのでティツィアーノに依頼したという肖像です。ブルーゲルの部屋もちょっと映っていてますね。

高橋さん:素晴らしい、他にないですよね。

映画情報どっとこむ TJ 高橋さん:「バベルの塔」で、映画が終わるっていうのは皮肉な隠喩ですよね。旧約聖書で最後言葉が通じなくなってバベルの塔が崩壊しちゃうわけですからね。

藤原さん:人間の営みみたいなものを客観視している監督の眼差しも見えますね。

高橋さん:いつまでたっても言葉が通じ合わないってことを言ってるんだろうなと。

藤原さん:映画の中でも美術館が未来に向けてのブランニング、この時代に合わせて変えていかなきゃいけないと言うシーンがありましたね。

高橋さん:ウィーン美術史美術館も重い腰を上げたと思いましたね。

藤原さん:日本の美術館も変わらなきゃいけないんではないかと思いますよね。

高橋さん:美術館だけでは変われない。やっぱり教育を変えていかなければ無理です。子供の頃から作品に触れないと、やっぱり大人になっても見に行かないですよ。台湾なんか田舎の美術館でも人が入っていますよ。日本は遅れていますね。

藤原さん:禁欲的な映画ではありますが、色々と考えさせられる作品ですよね

映画情報どっとこむ TJ ドキュメンタリー映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』

11月26日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか絶賛公開中。

645年間君臨したハプスブルク家の歴代皇帝たちが蒐集した膨大な数の美術品を所蔵し、今年で創立125周年を迎えたウィーン美術史美術館。収蔵作品は、クラーナハ、フェルメール、カラヴァッジオなどの名画から絢爛豪華な美術工芸品まで多種多彩。なかでも傑作「バベルの塔」をはじめとしたブリューゲル・コレクションは世界最多を誇る。そんな伝統ある美術館にもグローバル化の波は押し寄せ、美術館スタッフたちが「伝統の継承」と「次世代へ向けた革新」という正反対の選択を迫られながらも、自らの職務に取り組んでいく姿を映し出していく。それぞれの仕事に誠実に対処する彼らのストーリーは、悪戦苦闘しながらも時にユーモアにあふれ、働く喜びを感じさせてくれる。また、虚飾のないカメラで捉えた美術品の収蔵庫、修復作業場、閉館後の館内など、ふだん見ることのできない美術館の裏側も見どころのひとつ。


公式:
thegreatmuseum.jp
©Navigator Film 2014

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