諏訪敦 x 岩渕貞哉『エヴォリューション』トーク。美しい悪夢とは?


映画情報どっとこむ mari 原美術館で行われた一夜限りの先行上映公開が行われました。

​映画『エヴォリューション』11月26日(土)の公開に先駆け、​篠山紀信の「快楽の館」と化した原美術館で一夜限りの先行上映イベントが開催。上映後のトークゲストには、画家の諏訪敦さんと「美術手帖」の岩渕貞哉編集長がトークイベントに登壇しました。
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会場:​原美術館ザ・ホール
​​ゲスト:諏訪敦(画家)、岩渕貞哉(『美術手帖』編集長)

映画情報どっとこむ mari ​​​​ルシール・アザリロヴィック監督の最新作『エヴォリューション』の上映イベント後に、特別ゲストの精緻な絵画で知られる画家の諏訪敦さんと「美術手帖」編集長の岩渕貞哉さんが登壇。

諏訪氏の創作活動の話を交えながら、本作が持つ“美しい悪夢”について激論を交わしました。
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秘密の園の少女たちの世界を描いた『エコール』のアザリロヴィック監督が10年ぶりにメガホンを取った本作は、大人の女性と少年だけが住む​​絶島を舞台にした禁断のダークファンタジー。

主人公の少年ニコ​ラ​が描く“絵”が物語のキーになっているという岩渕編集長

岩淵編集長:話よりも最初に“絵”があって、それをどう見せていくか、どう繋いでいくか、というところが、監督が大事にしているところではないかと思います。

と独自の見解を示すと、

諏訪さん:前作の『エコール』はかなりお耽美(美をを最高のもの陶酔すること)でしたが(笑)、本作はテイストが全く違うもののやはり怖かったですね。僕は注射針が体に入っていくのを見られないタイプ。看護婦さんに“大丈夫ですか?”と声をかけられるほどに。

と意外な一面を吐露。

その反面・・・

諏訪さん:とても美しい映画、その正体を知りたいですね。監督はシュルレアリスムや日本映画からも影響を受けているそうですが、いろんな文脈があって、それが統合して、この美しさはできているのではないかと。

と推測。これに対して

岩渕編集長:試写会では“わかりにくい”という反応もあったようですが、お題を用意して、それに答えるだけじゃなく、単純に美しい映像、考えずに浸れる時間も貴重。説明が不要とは言わないけれど、この映画はそれほど必要としていない。

と強調した。

映画情報どっとこむ mari また、イベント中盤には、スライドを見ながら、ETV特集「忘れられた人々の肖像~画家・諏訪敦“満州難民”を描く」というドキュメンタリーでも放送された諏訪氏の創作現場を紹介。

旧満州に渡り、ハルビンの収容所に入れられ亡くなった祖母を再現して描こうというプロジェクトで、

諏訪さん:現地に何度も足を運んで、様々な情報を基に5年間、制作に費やました。祖母には会ったことがないので、同じ年齢のモデルさんをデッサンし、まずは健康的な肉体を描き上げ、それを少しずつ削ぎ落としていきました。

とコメント。飢えと感染症で苦しんだ祖母を、絵の中で再び死に追いやるという作業を改めて振り返って

諏訪さん:『エヴォリューション』の中でも、医療的な行為など、ある種の冷酷さというか、人間的な温かさを感じない“人でなし”のプロセスが描かれていますが、僕もそういう作業をしてきた感じはありますね。

とすると、

岩渕編集長:最初に健康体を作り上げて、“絵の中で殺していく”というプロセスは、リアルに必要なもの。

と諏訪氏の創作を称賛しました。

映画情報どっとこむ mari
篠山紀信「快楽の館」2016年 ⓒKishin Shinoyama 2016
篠山紀信「快楽の館」2016年 ⓒKishin Shinoyama 2016 

なお、この日、イベントの舞台となった原美術館は、現在、写真家の篠山紀信展「快楽の館」が開催中(2017年1月9日まで)で、作品は全て同館をロケーションにした撮り下ろしの新作。この特殊な場所で本作を鑑賞したことについて

岩渕編集長:美術館の白い建物や佇まいが、劇中に登場する病院など様々なものを連想させてくれるので、本作を観るには凄くいいところ。

とコメント。​​一方、篠山氏の作品について

諏訪さん:人間を撮ろうというよりも、自分の強度がある世界を魅せたいという意識が強いと思いましたね。力技というのはある種、崇高さに繫がることだからエンタテインメントとして楽しめましたが、僕は人間に関心があるので、共通点は皆無です。

と持論を展開。これに対して

岩渕編集長:篠山さんは、女性を切り取って空間に差し込んでいる“生け花”だとご自分で言っていたのですが、なかなか言えないことですよね。

と篠山氏自身の言葉を引用すると、

諏訪さん:生け花ですか!さすがに“人でなし”のスケールが違いますね、そこはリスペクトしたい。

と語り、会場の笑いを誘って終了!

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​登壇者プロファイル​

​諏訪敦(すわ・あつし)
画家。プロジェクト化された絵画の特異さで知られ、綿密な取材に裏付けられた高密度な絵画は、対象に内在する社会的な問題を浮上させ、歴史に回収されない個の手触りを浮上させる。

岩渕貞哉(いわぶち・ていや)
『美術手帖』編集長。1975年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。2002年から『美術手帖』編集部に在籍、2008年より現職。2015年に立ち上げた、『美術手帖 国際版』およびアートニュースサイト「bitecho[ビテチョー]」の編集長も務める。

映画情報どっとこむ mari ​『エヴォリューション

2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開


物語・・・

とある島、少年だけに施される奇妙な医療行為。

秘密の園の少女たちの世界を描いた『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督による、まるで悪夢のような、禁断のダークファンタジー。

少年と女性しかいない孤島に母親と暮らす10歳のニコラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めたニコラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。秘密の園の少女たちの世界を描いた『エコール』から10年。原始的な感情を呼び覚ます圧倒的な映像美でルシール・アザリロヴィック監督が描く、倫理や道徳を超えた81分間の美しい“悪夢”。エヴォリューション(進化)とは何なのか…?

2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開


公式サイト:
www.uplink.co.jp/evolution

Twitter:
@evolution_movie

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トロント国際映画祭正式出品
サン・セバスチャン国際映画祭 審査員特別賞・最優秀撮影賞
ストックホルム国際映画祭 最優秀撮影賞
ナント・ユートピア・国際SF映画祭 審査員賞
ジェラルメール国際ファンタスティック映画祭 審査員賞

脚本&監督:ルシール・アザリロヴィック(『エコール』(2004)『ミミ』(1996))
プロデューサー:シルヴィー・ピアラ、ブノア・カノン
撮影監督:マニュエル・ダコッセ
美術監督:ライア・コレット
出演:マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエほか
配給・宣伝:アップリンク
2015年/フランス/81分/フランス語/カラー/スコープサイズ/DCP
© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015
   
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