是枝裕和監督×別所哲也と考える映画術「Road to the World」レポ


映画情報どっとこむ ralph 未来を担うクリエイターを発掘し、次代を切り開く若き才能への支援を行うLEXUSSHORT FILMSと米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)は、10月23日(日)、INTERSECTBY LEXUS – TOKYO にて、是枝裕和監督を講師としてお招きし、若き日本人クリエイターが海外で活躍するための映画術を語るLEXUS SHORT FILMS × Short Shorts Film Festival& Asia 是枝裕和監督と考える映画術「Road to the World」を開催しました。

是枝監督と、事前応募により選出された参加者(20名)の双方向セッションのほか、SSFF & ASIA代表の別所哲也をモデレーターに迎え、是枝監督の海外での経験談や国内若手フィルムメーカーが海外進出するにあたり、必要なマインドセット、スキルセット、そして、是枝監督の次回作の構想や、是枝監督が考える「いい役者」についても語っていただきました。

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映画情報どっとこむ ralph 別所さん:是枝さんは何故、映画監督になったんですか?

是枝さん:大学入った時点では小説家になろうと思っていて。物書きになろうと思っていました。ただ、大学がつまんなくて(笑)。大学では何か教えてくれるわけじゃないとすぐ気付いてしまった。大学って好きなことだけをやれる場所だと思ってたので面倒くさくなっちゃって。大学の近くに映画館があったので、もともと映像は好きだったから映画を観ていた。それで映画の「脚本家」になろうと。映画監督のイメージっていうと、当時は黒澤監督だったから。高いところから怒鳴っているイメージ(笑)。あれは自分には無理だろうと。


別所さん:本格的にギアがはいったのは?

是枝さん:28歳の時。テレビの制作会社に入って、プロデューサーも、JASRACの申請なんかも、とにかく全部やった企画があって。その経験がとても面白かった。それまでは大学卒業してすぐに就職して働いてたけど、人間関係がうまくいかなくて、仕事も休んだりしちゃって。同期では「アメリカ横断ウルトラクイズ」の番組制作で活躍していて。その子が僕らの代では中心だなって思われるポジションなんだけど、僕はタフじゃないんで選ばれなかったんです。その後、偉い人とかとも喧嘩して、周りからこいつもたないなって思われている時、なんとか1本の企画が通ったんです。初めて責任を持って自分の企画を通した時、初めてこの仕事が面白いと思った。これをやっていなかったら、僕は辞めていた。それ以降は辞めたいと思ったことはないです。


別所さん:そこから、映画監督になったのは?

是枝さん:出社拒否して会社を休んでいる時に、脚本を悶々と書いていました。『誰も知らない』もこの時書いていました。26歳くらいの時ですかね。そこから実際15年くらい映画として実現するのにかかったけど。この脚本を持って色々なところを練り歩きました。映画になったのは、いろんな事情で映画を撮れることになり、支えてくれるプロデューサーが会社の外にみつかったからです。金銭面と精神面で僕の面倒をみてくれるプロデューサーに出会えたこと、この出会いが大きかった。僕が制作会社の人間関係をうまく立ち回っていれば、社内で出来ちゃったと思う。


別所さん:世界を意識したのはいつ?

是枝さん:1本目から。無名の監督が、無名の新人が主演でという映画を、実は配給会社も決めずに、予算も集まっていない中で撮っちゃったんですよ。1億で撮ろうとプロデューサーと話していて、5000万円は働いていた制作会社が出資してくれた。残りの5000万円は集まらなかったけど、撮っちゃった(笑)。見切り発車もいいところですね。当時31歳、『幻の光』という作品だったんだけど、作品が完成すれば、絶対いい映画だからヒットして、お金も回収できると思っていた。ただ蓋をあければ配給も決まらなかったし、お金も集まらなかった。ただ、たまたま送っていたヴェネチアから連絡が来て・・・。

映画情報どっとこむ ralph 別所さん:その「たまたま」が僕たちは知りたいんです!無名な監督が、「たまたま」で海外の映画祭に出品なんてこと
があるんですか?

是枝さん:今はエージェントを通して海外の映画祭に出品をしていますが、テレビのディレクターをやっていた時、ホウ・シャオシェン(台湾の映画監督)に取材する機会があって、この映画の企画のことを話したらヴェネチアに持っていけって。大好きな監督だったので、その時からヴェネチアしか頭になかった(笑)。当時は無名だったので、海外の映画祭で賞をとって国内に凱旋Uターンするイメージでした。今から考えると間違ったやり方ですけどね。なので、VHSを事務局に送っただけなんです。そしたら映画祭事務局から電話がかかってきて。日本での公開や、他の映画祭の状況を聞かれて、まだどこにもみせていないといったら、みせるなと言われた。これはいけるかなと思ったら、コンペにノミネートが決定した。その辺りから、急にいい方向に動き始めました。


別所さん:そして実際にヴェネチア国際映画祭に行って。三大映画祭に参加してどうでした?

是枝さん:楽しかった(笑)。のどかで、のんきだし、当時はマーケットもなかったし。単純に島で行われているのどかな映画祭。


別所さん:カンヌとは対照的ですね。

是枝さん:カンヌはビジネスとしてお金が絡むから、罵り合いもあるアグレッシブな映画祭ですね。僕は大体今は決まったセールスがいるので、カンヌに行っても配給会社とのMTGをしたりとか。エージェントはその期間にまだ売れていない地域に売り込む。受賞結果が出る前に売るのかどうか、前評判の時に売っちゃうのか。その辺の判断はエージェントの価値観でやっている。なので、エージェントに出会うのもとても大事です。映画祭の先のビジネスのまな板にのせる役がいないと厳しいと思う。ワールドセールスをやれるだけのエージェントがいればいいけど、今の日本にはいないので。主なセールスエージェントは大体フランスにあるので、カンヌ第一っていうのがある。フランスは自国の映画状況を映画祭のポテンシャルに如実に反映しているので。今はカンヌの一人勝ちな状況が続いていると思います。皆デビューは、とにかくカンヌを狙っている。そこで新人賞をとってヴェネチアにいくのはいいけど。カンヌで発見された映像作家という肩書きが、世界的にいいんでしょうね。


別所さん:映画祭の役割はどう思いますか?

是枝さん:ひとつは、映画という文化の多様性を確保している場所。もう一つは、マーケット。作り手からすると自分の映画をより遠くへ届けるためのプラットホーム。そこで受賞したことが国内の興行に影響する映画祭は限られてしまうけど。カンヌは一番保守的(新人を発掘するのは難しい)。新人で目指すならナント(仏)とか、バンクーバーとか、釜山国際映画祭とか、ロッテルダムの新人コンペとか。映画祭はピラミッド形式だから、そこから階段を登り始めて、10年、20年後にカンヌのコンペっていうのが現実的なんじゃないかな。こういった映画祭は国内の興行には関係ないけどね。そうやって認知度をあげていくには地道な努力が必要ですし、そこでエージェントに出会っていかないと日本で待っていても何も始まらないから。いかに映画祭に参加する時に、セールスエージェント、パブリシスト、字幕・通訳が大切かを知った。各国にいい通訳をみつけるのも非常に大切。今僕はようやくお会いできた感じ
です。この3つを行く前に整えること。そこは戦い。組織をどう作るか。ちょっとずつでいいので、サポートメンバーを増やしていくことが必要。

映画情報どっとこむ ralph 別所さん:ショートフィルムをどう捉えている?

是枝さん:昔、シネカノンは短編をきちんと上映するということを考えてシネアミューズという映画館を作った。必ず長編の前に短編を上映して映像作家を育ていく。出資する側としても、いきなり大きなお金を出すより、短編にお金を出したほうが、リスクが少なく作家を見極めることができる。ただ、日本ではなかなか一般的になっていないです。


別所さん:映画の興行が21世紀になってかわりましたよね。超短編もあってもいいし、超長編もあってもいい。

是枝さん:多様であるべきだと思う。どの映画も2時間弱で収まるはずがないと思っているけど、自分はそれに適応してしまっている。大体、100シーン90ページくらい。ラジオの仕事でたまたま『クレイマー、クレイマー』を改めて観たんですけど、90分ちょっとなんです。全く無駄がなく、非常に複雑な関係をみせられてしまうと、自分の作っている120分の話はもっとシェイプできるんじゃないかと思ってしまう。


別所さん:フィルムにこだわっている?現在のテクノロジーと映画についてどう思いますか?(VRやドローンの出現は映画にとって何をもたらすか?)

是枝さん:ドローンもまだ使ったことないな。作品によってはやってみようかな、くらいな感じです。新しいものにすぐ
いかないタイプなんで。フィルムで作った映画とDCPで作った映画は、まだ質感が違う気がしているので、撮れる間
はフィルムで撮りたいです。フィルムを諦めれば、コストは全然違うと思いますが。



別所さん:フィルムに拘ることってどういうこと?
是枝さん:質感が一つ。あとは、不便なことが良かったりする。フィルムで撮るのってカメラが重いんですよ。重いものが現場にあるって悪くない。お祭りには神輿があってみんなが担がなくちゃいけないものがあって、みんなの意識が神輿に集中している。カメラがドーンとあるってこともそういうこと。デジタルで撮るとすぐ現場で再生できて、ほとんど完成系を同じクオリティで、現場でみれる。そうするとフィルムのカメラで撮っている唯一性がなくなっちゃうんです。フィルムって、フィルターワークとレンズによってモニターにだすけど、それは完成系ではなく、完成のイメージは頭にしかない。画が上がってきて、こういう画だったんだとまわりは初めてわかる。


別所さん:撮ったものを想像できる力。その時間が特別なものになりますよね。
是枝さん:デジタルになると、スタッフの反応がモニターに張り付くことになってしまう。チェックしてもう1回。その時の集中力に信頼感がなくなってくるんです。「オッケー」と言っても自分自身が不安になっちゃう。「チェックします」と言ってしまうことが、便利になったのか、悩むところです。


別所さん:いい役者とはどんな役者ですか?

是枝さん:好きな役者は余計なことをしない人。台本にないことをしてもいいんだけど、ちゃんとしなくてもそこにいられる人。お芝居をしようとしてなくても、そこにいることができる人。

映画情報どっとこむ ralph 別所さん:演出をする上で気にかけているのは?

是枝さん:子供には台本を渡さない。まっさらな状態で、相手のセリフを聞いてくれと言います。広瀬すずもそうでした。その空間に自分がどういるべきかをわかっている人。希林さんなんかは非常にうまい役者だと思う。団地の部屋に40年暮らしているおばちゃんにみえるかを、短い時間にどう折り込めるのか。希林さんは台本を読んでいる時にずーっとそれを考えていて、素晴らしい基準を自分に設けていると思います。なので控え室では声を掛けづらい。現場に入るとミリ単位でものを動かしたりしているんです。いい役者は身体能力が高いと思います。画面の中で自分がどう見えているのかが、どう見え方が変わるのかが、画としてみえている。岡田准一くんもそう。V6の踊りで覚えたんです。彼は他の5人より遅れてグループに入ったから、どう画面の中で自分がいるべきか、徹底的に訓練した。「ぼくがカメラに合わせますから、カメラは自由に動いてください」と言われたんですけど、出来上がると本当その通り。そういう人ばっかりじゃないけど、そういう役者ってたまにいるんです。


別所さん:最後に、是枝さんは、今後、どのような映画を作っていきたいですか?

是枝さん:ファミリードラマを作る監督と思われていますが、実際にはもう何本もファミリードラマを作っていますが、次回は法廷モノをやりたいと思います。現在、脚本を書いており、構想中です。

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