「天文&ロマンだけではない。本質を見る目に気付かされた」

光のノスタルジア南米チリを代表するドキュメンタリー作家パトリシオ・グスマン監督が、宇宙や大自然を捉えた圧倒的な映像美とともに、祖国チリが辿ってきた苦難の歴史を描く、国内外の映画祭で受賞をした『光のノスタルジア』が10/10(土)より岩波ホールで公開されます。

公開に先駆け「アルマ望遠鏡」が捉えた“死にゆく星の音”を、さまざまなアーティストが楽曲化するプロジェクトに参加している音楽家の蓮沼執太さんと、本作へコメントを寄せている音楽・批評家の大谷能生さんが登壇し、トークイベントが行われました。

1001_大谷能生さん、蓮沼執太さん

10/10公開『光のノスタルジア』先行イベントレポート
日時:2015年10月1日(木)
場所:渋谷アップリンク
ゲスト:蓮沼執太(音楽家)、大谷能生(音楽・批評)

壮大な宇宙映像がひしめく中で、ビー玉を使ったメタファー的映像に心惹かれた二人は、「本質を見る目」に気付かされたと改めて作品の奥深さに感心しています。

公開を控えた本作と時期を同じくして、「星」にゆかりのあるアルバムを発表した蓮沼さん。

蓮沼さん:チリにある『アルマ望遠鏡』が捉えた70の電磁データをオルゴール音に変換し、それ基にいろんなアーティストが楽曲化するというプロジェクトに参加しました。『Music for a Dying Star』というタイトルで、死にゆく星の音がコンセプト。オルゴールの音にしたところが情緒的で人間的なプロジェクトだと思いましたね。だから、本作も星をテーマにしたロマンチックな映画なんだろうなと思い込んでいました。

映画は圧倒的な宇宙映像と共に衝撃的な展開を見せ、予備知識なしで鑑賞した蓮沼さんは、

蓮沼さん:天文学的なことと、政治的なことが相対的に描かれていることを全く知らなくて。星の話から一変して、チリの歴史の話が連続する。見上げれば星空のアタカマ砂漠で大虐殺があり、ここに人が埋められているって何なんだ!という思いをダイレクトに受け取りました。この対比はとても勉強になりましたね。

大谷さん:天文&ロマンだけじゃないんだということですよね。見終わってから、こういう風に撮るべき映画だって思いましたね。これしか考えられないメタファー(暗喩)の在り方です。

と納得していた。

とくに、映画の最後に登場するバレンティナ・ロドリゲス氏の言葉に感銘を受けたという蓮沼さんは、

蓮沼さん:独裁政権下、両親が行方不明となり、祖父母に育てられたロドリゲスさんは天文学の道へ進むのですが、まさに映画の内容とクロスする方ですよね。その方が『意識のポジショニングでガラリと世界が変わる』ということを語っていましたが、そこに気付くことは素晴らしいこと。音楽もサウンドの一つの波形なので、その波形をどう見るか、によって変わってくる。人間が作ってきた過去の音楽を物差しとして捉え、未来の音楽はどうなるのか、そういうことを考えてみる行為はとても意義があります。

と目を輝かせる。これについて大谷さんも、

大谷さん:それによって次の世代が生まれ、次のサイクル、波、リズムが生まれて来るんだよね。

と同調していた。

また、映像表現に

大谷さん:面白いなと思ったのは、星のアップの映像を見ると、とても近いじゃないですか。でも、実際は遠い。これはロングショットなのか、クローズアップなのか、わからない。そういうのがいっぱい出てくる。

蓮沼さん:グスマン監督がビー玉を撮っていましたが、あれはメタファーですよね。全くビー玉に見えなかったけど。

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これに対して

大谷さん:メタファーなんだけど、接写で撮ると遠くの星と変わらないんですよね。引くとわかるけれど、クローズアップで見ているときは、『本質』を見ていないんだなって気付かされた。とくにカメラで撮った場合は。同じフレームに入ってきて、他の物と比較して、初めて尺とか質感がわかる。物事は相対的なんだなってことがこの映画を見ていてわかり、ドキっとした。よく考えて撮っている作品。

と本作を絶賛しました。

映画『光のノスタルジア』『真珠のボタン』は10月10日より岩波ホールほか全国順次公開。

©Atacama Productions (Francia) Blinker Filmproducktion y WDR (Alemania), Cronomedia (Chile) 2010

蓮沼執太(はすぬま・しゅうた)
1983年、東京都生まれ。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィルを組織して国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、音楽プロデュースなどでの制作多数。近年では、作曲という手法を様々なメディアに応用し、映像、サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会やプロジェクトを活発に行っている。

大谷能生(おおたに・よしお)
1972年生まれ。音楽(サックス・エレクトロニクス・作編曲・トラックメイキング)/批評(ジャズ史・20世紀音楽史・音楽理論)。96年~02年まで音楽批評誌「Espresso」を編集・執筆。菊地成孔との共著『憂鬱と官能を教えた学校』や、単著『貧しい音楽』『散文世界の散漫な散策 二〇世紀の批評を読む』『ジャズと自由は手をとって(地獄に)行く』など著作多数。

『光のノスタルジア』
光のノスタルジア真珠のボタン_チラシ宇宙の壮大さに比べたら、チリの人々が抱える問題はちっぽけに見えるだろう。でも、テーブルの上に並べれば銀河と同じくらい大きい」P.グスマン

チリ・アタカマ砂漠。標高が高く空気も乾燥しているため天文観測拠点として世界中から天文学者たちが集まる一方、独裁政権下で政治犯として捕らわれた人々の遺体が埋まっている場所でもある。生命の起源を求めて天文学者たちが遠い銀河を探索するかたわらで、行方不明になった肉親の遺骨を捜して、砂漠を掘り返す女性たち……永遠とも思われる天文学の時間と、独裁政権下で愛する者を失った遺族たちの止まってしまった時間。天の時間と地の時間が交差する。

2011年山形国際ドキュメンタリー映画祭 「山形市長賞(最優秀賞)」受賞作品

監督・脚本:パトリシオ・グスマン 
プロデューサー:レナート・サッチス 
撮影:カテル・ジアン
天文写真:ステファン・カイザード
製作:アタカマ・プロダクションズ 
(2010年/フランス、ドイツ、チリ/1:1.85/90分)
©Atacama Productions (Francia) Blinker Filmproducktion y WDR (Alemania), Cronomedia (Chile) 2010

『真珠のボタン』
水には記憶があるという。ならば、私たちは失われた者の声を聞くことができるのだろうか。さまよえる魂たちも、安らげるのだろうか。

全長4300キロ以上に及ぶチリの長い海岸線。その海の起源はビッグバンのはるか昔まで遡る。そして海は人類の歴史をも記憶している。チリ、西パタゴニアの海底でボタンが発見された。--そのボタンは政治犯として殺された人々や、祖国と自由を奪われたパタゴニアの先住民の声を我々に伝える。火山や山脈、氷河など、チリの超自然的ともいえる絶景の中で流されてきた多くの血、その歴史を、海の底のボタンがつまびらかにしていく。

2015年ベルリン国際映画祭銀熊賞脚本賞受賞
2015年山形国際ドキュメンタリー映画際インターナショナル・コンペティション部門出品

監督・脚本:パトリシオ・グスマン 
プロデューサー:レナート・サッチス 
撮影:カテル・ジアン 
編集:エマニエル・ジョリー
写真:パズ・エラスリス、マルティン・グシンデ 
製作:アタカマ・プロダクションズ
(2014年/フランス、チリ、スペイン/1:1.85/82分) 
© Atacama Productions, Valdivia Film, Mediapro, France 3 Cinema – 2015

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