『NO』 記者会見


東京国際映画祭コンペティション
『NO』のゲストによる記者会見が行なわれましたので、ご報告。

■ 日時・場所 10月27日(金)
       17:20~ @ムービーカフェ
■ 登壇者 ダニエル・マルク・ドレフュス(製作)

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ダニエル・マルク・ドレフュス(製作): 東京国際映画祭に出品することができ大変光栄です。
皆様に温かく迎えていただいたことを嬉しく思っています。今回、監督のパブロ・ララインも主演のガエル・ガルシア・ベルナルも来日できなかったことを非常に残念がっていました。

Q: 上映後のお客さんの反応がとてもよく、Q&Aも盛り上がっていましたが、評判がいいだろうという確信はありましたか?

ドレフュスさん: 毎回映画をつくるたび、これは映画に限らずクリエイティブな仕事すべてに当てはまることですが、高く評価されることを願うことはあっても、期待をしてはならないと思っています。地理的にも文化的にもかけ離れた場所で起こったストーリーを温かく迎えていただくことは、感動的な体験です。もちろん評判が良いのは嬉しいですが、決して当たり前だとは思っていません。

Q: 1988 年の事件を作品として完成させるには、それだけの時間が必要だったということですか?

ドレフュスさん: パブロ・ラライン監督と、もうひとりのプロデューサーでパブロの兄でもあるファン・デ・ディオス・ララインが進めていたこのプロジェクトのことを聞いた時、私はこのストーリーを伝えねばならない、という個人的な必然性を感じました。というのも私は独裁政権下のブラジルで育ち、父は政治学の研究者でした。非常に政治色が強い家庭環境だったのです。弾圧される恐れがあるから今までこの作品が作られなかったということではありません。もともと演劇作品であった本作品がパブロの目にとまり、リサーチをし、実際の活動に携わった人物を探し出し、当時の精神を反映した作品を完成させることができたタイミングが今だったのです。
『NO』はとてもタイムリーな作品です。中東地域の不安定な状態など、今でも世界中のいたるところで平等や人権を求め、自分たちの声に耳を傾けてほしいと闘っている人がいます。活動方法も非常に限られていた1988年当時の人々でさえも大きなムーブメントを起こし、国民そして国の運命をも変えることができたのです。ツイッターやインターネットが存在する現代において、人々が自らの幸せを勝ち取るためにできることは無限だ、そんなメッセージが込められた作品を、今こそ作りたかったのです。

Q: 主人公は選挙に勝利した後も浮かない表情でしたがその理由は?

ドレフュスさん: 主人公のレネのリアクションは、見る人によって解釈が異なると思います。レネの反応は元々彼がこのキャンペーンに参加した理由の曖昧さにあるのかもしれません。父親の思い出を誇りに思いたかったのかもしれないし、妻を取り戻したかったのかもしれない。名誉や権力がほしかったのかもしれないし、勝利や国の民主化を願っていたのかもしれない。レネがなぜ嬉しそうではなかったのか、またなぜ勝利の祝いの輪に入ることなく息子と共に街並みに消えていくのか…それも見る人の受け止め方によって解釈は異なるでしょうが、アートというものはそもそも様々な解釈を可能とするものなのです。選挙に勝利した時に「これで終わり?」と言ったレネは、もっと劇的な瞬間を期待していたのかもしれませんし、自分はもはやムーブメントの象徴ではないと思ったのかもしれません。明確な答えはないと思います。

Q: 1988 年当時の状況について教えてください。

ドレフュスさん: 1988 年当初のピノチェト政権は15 年続いていましたが、海外からの圧力がかなり強くなっていたこともあり、ピノチェトが最も強硬にチリを支配していた70 年代後半に比べれば最悪の圧政時代ではありませんでした。そんな状況の中、世界の国々に対しピノチェト政権の正統性を訴えるべく住民投票が行われることになりました。ピノチェトはテレビ・ラジオ・出版などの全メディアさらに軍隊も支配しており、負けるわけがないと思っていました。選挙に勝利し、世界の国々に自分が国民に支持されており、必要とされていると示そうと思っていたのです。ですが素晴らしいことに、NOキャンペーンが起こり、ピノシェは敗北しました。
映画では描いていませんが、当時のチリでは投票方法を知らない者が多く、実際の住民投票の前にはNO キャンペーンの一環としてそれを人々に教えてまわったのです。

Q: 映画の中でピノシェ政権の恐怖政治について描いてないのはなぜですか?

ドレフュスさん: それがNO キャンペーンの本質だからです。レネが運動に初めて参加した際に「殺戮された者:3000 人、拷問された者:30,000 人、国外追放された者:200,000 人」という文字を見ます。こうした情報は人に恐怖を与えますが、レネが掲げたかったのは希望や幸福の追求でした。レネは過去の恐ろしい出来事を人々に思い出させるのではなく、NO と投票することによって幸せになれるのだと教え、ネガティブな選択肢であるNO を希望や幸せのきっかけとなるポジティブなNO に変えたのです。

NO
『NO』
監督:パブロ・ラライン
出演: ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カストロ、ルイス・ニェッコ
(2012/117 分/スペイン語/チリ=アメリカ)

チリに君臨するピノチェト独裁政権の信任を問う国民投票の実施が決まる。
強者の「YES」陣営に対し、「NO」陣営は若いCM ディレクターを採用して果敢なキャンペーンを展開する。
88 年当時の模様を斬新なスタイルで再現した、勇気溢れる興奮の政治エンタテインメント。
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