映画情報どっとこむ ralph スペイン・フランス合作映画『おもかげ』が、10月23日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショーとなります。

幼い息子を失ったひとりの女性の希望と再生の旅路を描いていく本作は、スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に製作した15分の短編映画「Madre」が出発点となっている。同作は、第91回アカデミー賞®短編実写映画賞にノミネートされたほか世界各国の映画祭で50以上もの賞を受賞し、世界の映画人を驚かせた。短編に続いて本作『おもかげ』のメガホンをとったソロゴイェン監督は、緊迫感あふれるワンシーンのその短編を大胆にも映画のオープニングシーンとして採用し、息子を失った女性エレナの〈その先〉の物語を描いていく。本作は2019年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、主人公エレナを演じたマルタ・ニエトが女優賞を受賞したほか、スペインで4つもの主演女優賞を獲得。止まった時間を深い失意とともに生きてきた女性の繊細さと迫真さが共存するニエトの圧倒的な演技に、観る者は思わず息を呑むだろう。
公開を来月に控えた9月29日に本作の試写会が行われ、上映前に精神科医の名越康文氏がトークショーを行い、映画の印象や主人公エレナを巡る心境を紐解くトークを展開しました。
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名越氏は、映画を観ての印象として「本当に無駄のない、素晴らしい映画だと思いました」と語る。そして、「短編映画を長編化したら間延びすることが多い中で、これは長編もすごいという僕の中では稀な映画体験でした」と続ける。さらに、短編映画が高い評価を受けた上でそれを長編映画にしたことについて「僕だったら短編が評価された後、それを長編にはしないです(笑)監督にはよほどの使命感や必然性があったんじゃないかと思います」と笑いを交えながら語る。
映画の内容について、「(映画冒頭にある短編にあたる)はじめの15分は怒涛なんです。その10分ぐらいのところで主人公の感情表現が凄すぎて、“僕はこの映画についていけるのかな…”と感じてもいたんです。エレナを演じているマルタ・ニエトの力量が溢れすぎて。僕はそこで態勢を立て直しました(笑)」と振り返る。その短編の10年後のエレナを描いていく、メインのストーリーで作品のジャンルが変わったかのように違った印象を受けることについて、「物語を紡ぎあげていく感じになります。物語という意味で“ずらし”が入るんです。本当に深くて、誰にでも分かる、誰にでも共感できる内容なんです」と魅力を語る。さらに、「最後のあのシーンをどう捉えるか、皆さん全員に聞きたいぐらいです。観終わった後の自分自身の心の風景が自分でも面白かったんです」と語った。
映画冒頭でエレナに悲劇が襲った後、映画では描かれない彼女の10年間の余白について、「精神医学という意味で積みあげてきた立場として一般論で言うと、ある意味で時間が止まってるんですよね。そこから先に行けない。普段は誰かと話をしたり楽しんだりできるけど、ツボにはまると体ごと過去に戻ってしまう。分かりやすくいうとトラウマということですが、自分の人生のある部分が完全にフリーズして、そこから一秒も前に進んでいないという感じになる。そして、時間が経てば経つほど他人と共有できなくなるんです。その時は皆が“大変だったね。自分も・・・”という感じで接してくれるけど、7年も8年も経つと、“もうその話はいいよ”、“もっと前向きになりなさい”という風になってしまう。これが一番堪えるんです」と、エレナが劇中置かれる厳しい状況を言い当てる、絶妙なトークを展開する。その上で、自分や身近な人がそういう状況に置かれた場合に向けてのアドバイスとして、「まずは、“そこを乗り越えないと前に進めない、ということはない”というのを理解することだと思います。それを抱えながら前に進む、それを抱えながら色んな体験を共有する・・・それが大きいんです」と語る。

名越氏は、本作に<かけがえないものは、無くしたものである。無くしたものを中心に、世界は回っている。>というコメントを寄せているが、これについて、「ポジティブな気持ちを書いたんです。なくしたものを取り戻そうとしているのではなく、目の前にある関心のあることができると、どこからかそれに対する情熱が湧いてくる・・・作品を作るとか、仕事に向き合うとか。それをし終わった後、さらに何か月か経った後で、“あれはなくしたものを一生懸命探してたんじゃないか”と気づくんです。だから、僕たちが情熱的に何かに取り組むのは、今の自分の人生を作っているものであると同時に、過去になくしたものの埋め合わせでもある、その両方の意味を持っている。そういうことを込めたものです」とコメントの意図を明かす。

最後に鑑賞ポイントとして、「エレナの前に、ある意味パートナーとなる少年ジャンが現れますが、僕は、ジャンは『ベニスに死す』の少年タジオを意識した人選ではないかと思っています。彼が初めて登場する場面が本当にヒリヒリするんです・・・!まさに少年。そのふたりの年齢を超えた響き合いに身を預けて観ていただけたらと思います」と締めくくった。

映画情報どっとこむ ralph スペイン・フランス合作映画『おもかげ』

【STORY】
我が子をなくした失意から立ち直り、 人を赦すことで新たな一歩を踏み出そうとする 一人の女性の希望と再生の旅
エレナは離婚した元夫と旅行中の6歳の息子から「パパが戻ってこない」という電話を受ける。ひと気のないフランスの海辺から掛かってきた電話が、息子の声を聞いた最後だった。10年後、エレナはその海辺のレストランで働いていた。ある日、息子の面影を宿したフランス人の少年ジャンと出会う。エレナを慕うジャンは彼女の元を頻繁に訪れるようになるが、そんな2人の関係は、周囲に混乱と戸惑いをもたらしていった――。
これは、暗闇から光へ、死から生へ、罪悪感から赦しへ、そして恐怖から愛へと少しずつ歩み始める、ひとりの女性の再生の物語。

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監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン
共同脚本:イサベル・ペーニャ
撮影:アレックス・デ・パブロ 
製作:マリア・デル・プイ・アルバラド
出演:マルタ・ニエト、ジュール・ポリエ、アレックス・ブレンデミュール、アンヌ・コンシニ、フレデリック・ピエロ
原題:MADRE/2019年/スペイン、フランス/カラー/シネマスコープ/129分/5.1ch/スペイン語、フランス語/字幕翻訳:柏野文映、手塚雅美
協賛:スペイン大使館 後援:インスティトゥト・セルバンテス東京
配給:ハピネット 配給協力:コピアポア・フィルム  宣伝:サルーテ  ©Manolo Pavón 公式HP:omokage-movie.jp Twitter:@omokage_movie
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