映画情報どっとこむ ralph 登壇女だけが暮らす男子禁制の山奥の集落を舞台に、監督自身の過去の体験に根ざした母と娘の物語を描いた映画『クシナ』は、大阪アジアン映画祭2018でJAPAN CUTS Awardを受賞。北米最大の日本映画祭であるニューヨークのJAPAN CUTSに招待され、独特の感性と映像美によって支えられる世界観は海外レビューでも高い評価を獲得。

本作は、映画やCMの演出や制作に加え、中川龍太郎監督の『四月の永い夢』では主人公の部屋のデザインとその装飾を担当するなど、独特のキャリアを築いてきた速水萌巴監督の長編デビュー作。本作では監督だけでなく、美術・衣装も担当し、美しい映像世界を構築した。

その瑞々しさで劇中の女性人類学者も魅了するヒロイン・奇稲<クシナ>には、本作で主演で女優デビューした郁美カデール。14歳の時にクシナを生んだ28歳の母・鹿宮<カグウ>には、ラストの表情で監督を泣かせた個性派女優・廣田朋菜。男の後輩と共に閉ざされた共同体に足を踏み入れる人類学者・蒼子に、均等にバランスのとれた美しい顔が歪な世界に足を踏み入れる現代女性の象徴としてぴったりとキャスティングされた稲本弥生。村長である、カグウの母・鬼熊<オニクマ>には、強さと母性の両方を兼ね備える小野みゆきと、各世代のミューズが集結。速水監督は、物語が自身と母親とのものに近すぎるという理由で2年前に1度は断った配給のオファーを、本年になって勇気を出して快諾。2年の時を経て、幻の映画が、今ベールを脱ぐ。

この度、日本外国特派員協会で、記者会見を開催速水。萌巴監督、稲本弥生、小野みゆきが登壇し、本作に懸けた想いなどを語った。

日時: 7月15日(水)
場所:公益社団法人 日本外国特派員協会
登壇:速水萌巴監督、稲本弥生、小野みゆき

映画情報どっとこむ ralph 始めに4年前撮影された本作をどうしてこの度公開することになったのか聞かれた速水監督は、「この映画は2016年に撮って、完成するのに2年かかっていて、2018年に(大阪アジアン)映画祭で上映された際に配給のオファーもいただいていたけれど、その時に受けたインタビューの内容を私の母が読んでショックを受けました。そういうつもりで撮ったわけではなかったのに、『辛い思いをさせていたんだね。育て方を間違っていたのかな』と苦しんでいる母の姿を見て、この作品と距離を取れて、向き合い方がわかってから公開した方がいいと思って、公開するまで2年間かかりました。」と本作公開までのエピソードを告白。

監督のお母さんの象徴でもあるオニクマ役を演じた小野は、「本作に出演した理由は?」と聞かれ、「そもそも自分自身が子供を作りまして、20年ほど撮影の仕事から離れていました。(撮影は4年前なので、)子供を育てている16年間の間は映画を観る方に回っていました。面白い日本映画が増えていて、今の若い、これからどんどん映画を作る人たちと仕事をしてみたいというのが第一の理由でした。」と回答。

外国の記者から「ポスタービジュアルにインパクトがあるのですが、撮影前にイメージがあったのか?」と聞かれた監督は、「寝そべっている少女や映画のイメージは、撮影前に絵画や画像の検索をしたりして、イメージを集めて、作っていきました。」と話した。

「なぜこのコミュニティについての映画を作ったのか?」と聞かれ、監督は、「よく聞かれるけれど、コミュニティを(設定の)最初に設置したのではなく、まずはお母さんと娘の物語を描きたいと思っていて、その舞台を考えていきました。それがたまたま森の中になりました。日本だと、若くして妊娠して出産した人たちに対して厳しい考えがあるので、生きづらい人も沢山いると思うんですけれど、もしそういう人たちが樹海に入ってこういうコミュニティを見つけたら、おそらく皆住み着いていくんではないかと想像したんです。男性が行き着いてもそこにとどまることはないだろうなと思い、キャラクターをまず作って、それを動かしていくことで、物語を作っていったら、自然と女性だけの集落になりました」と物語の成り立ちについて説明。

衣装について聞かれ、監督は、「この物語では、各キャラクターは心境がはっきりしない部分があるので、まず脚本の段階でそれぞれのキャラクターの役割をしっかり決めようと思って、それに伴い、それぞれの色を決めていきました。ただ、私1人で全てを決めたわけでなく、衣装合わせに小野さんも自前の衣装を持ってきてくださって、スタッフ皆で考えました。」とチームワークを強調。

「小野さん演じるオニクマの衣装は、森では青や黒などダークで力強い色だけれど、町のシーンでは、黄色の明るいワンピースを着てハイヒールを履いていたのは、外の世界に溶け込むために意図的にイメージを変えていたのか?」と聞かれた小野は、「おっしゃるように町に溶けこむために着替えるんですけれど、本作の衣装はありもので、本作のために何も作っていなく、監督のお家にあるものを持ってきているんです。エキストラの方が着る着物も、出演者の小沼君が縫っていました。撮影前に『こういうイメージの衣装です』と衣装の絵を頂いていたので、私はそれに合わせられるように家であるだけのマフラーや長い薄手のコート等を準備して、衣装合わせに行きました。監督のお母様のワンピースを着たら、小さくて、息ができなかったです!」と笑いを取りつつ、「本作は、衣装を作り込んでいないんです。『女の人たちが逃げて、女の人たちだけが住む集落ができました』となるように、普通に昔からあるお洋服を使っているから、リアリティがあるはずだと思っています」と太鼓判を押した。

「稲本さんは、現実の世界から集落にやってくるキャラクターで、衣装もファンタジックな村民たちと対照的に自分だけつまらない短パンにシャツでしたが、自分はアウトサイダーのように感じましたか?」と聞かれた稲本は、「服装や環境も用意されたもの全てが役作りにすごく助けになりましたし、監督と一緒にこういう学者はこういう行動をするだとか、登山の時はこういうのは間違いだということを話し合って、服装を含めて監督と一緒にリアリティを深めていきました」と話した。

本作のインスピレーションが自分だとお母さんが知ったのは、お母さんが作品を見た時なのか、インタビューを読んでからだったのかと聞かれ、監督は、「インタビューを読む前にまず映画を見て、意味がわからなかったらしいです。インタビューを読んで自分の話だったと知ってショックを受け、また見たけれど、やはり意味がわからないとのことでした。私の姉も見たけれど、姉は号泣していて、姉妹では通じるものがあったんだなと思いました。この映画でも描きましたけれど、やはり母親と考え方や想いが食い違っていた部分が確かにあるんだなと改めて感じました。」と述懐。

ジョン・ユンカーマン監督からは 「(撮影後の)ポスプロに2年もかけたと聞いて、納得しました。音楽だとか音響に相当こだわりがあったように感じたけれど、2年のポスプロの間に奥行きが広がったのか?」と聞かれ、速水監督は、「撮影の前にカメラマンと『必要最低限の意味のあるショットを撮っていこう』と話し合っていました。現場では、撮ったショットだけでこのシーンは成り立つと思うけれど、編集すると足りなかったりして、すごく悩みました。1人の作業なので、終わりを見つけるのも難しかったです。現場の音がうまく録れていなかったところがあって、半分くらいアフレコです。そのおかげで、整音の方と話し合って、映画の舞台のサウンドデザインも考えるきっかけになり、1から音を作りました。それが作品を深めてくれたなと思います。」と驚きの事実が語られた。

最後に「この映画を見終わったお客さんにどういった感情を持って帰ってほしいか?」と聞かれ、稲本は、「監督の想いもそうですし、お母様とのわだかまりだったり、色々なことが描かれているんですが、その他にも部外者を演じた私としては、女性しかいない村に足を踏み入れるという男性の目線であったり、村を壊さないようにしているのに自分が1番壊してしまう人など、色々な人の愛の形があるので、色んな方が自分の目線で楽しんでいただけたらと思います。」とメッセージを伝えた。

小野は、「さっき取材を受けた時に、男性のインタビュアーさんで『母親に会いに行こうかな』とおっしゃった方がいらっしゃいました。本作は説教じみた映画ではないです。ただ、日本では20年前私が20代30代だった頃は、女の人が意思を持たないというか、男の人が守らなくてはいけない生き物として描かれていて、ステレオタイプにはめられるのがとても気持ち悪かったんですけれど、この映画を見ると、本当の愛の深さは、『かわいい、いい子ね』ではないので、そういうことを含めて、女の人の見方が変わるかもしれないですし、お母さんが化粧もせず自分たちが育てられたことの強さや美しさは、か弱いだけじゃないという、日本の古くさい女の人のイメージじゃないものが届けばと思います。昔の女の人たちがいけないのではなく、今まですごく弱いものとして描かれてきたと思います。女の人が強くてたくましくて、生き様が美しいということが感じられる、ちょっとファンタジーに見えるけれど、リアルなファンタジーの映画かなと思います」と今までの経験を踏まえ、力説。

監督は、「私たちは人生の中で色々な決断をしていくわけですけれど、愛によって決断する時も何回か訪れると思います。愛を伴った決断はすごく力強いものだと思っています。ただその愛というものが、他者に、自分が思うように届いているかどうかはわからない。そこも考えて欲しいなという想いもあります。あと、私はファンタジーがすごく好きで、世界中のファンタジーの映画を見て育っているんですけれど、日本のファンタジー映画で目立ったものがないと思っています。日本にはせっかく風景、文化、物語があるので、それをもっと活かしたファンタジーを世界に輸出できたらなという想いで作りました。」と話し、会見は終了した。

映画情報どっとこむ ralph 『クシナ』

7月24日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

公式HP:
kushinawhatwillyoube.com
Twitter:
@kushina_cinema

【あらすじ】
深い山奥に人知れず存在する、女だけの”男子禁制”の村。村長である鬼熊<オニクマ>(小野みゆき)のみが、山を下りて、収穫した大麻を売り、村の女達が必要な品々を買って来ることで、28歳となった娘の鹿宮<カグウ>(廣田朋菜)と14歳のその娘・奇稲<クシナ>(郁美カデール)ら女達を守っていた。閉鎖的なコミュニティにはそこに根付いた強さや信仰があり、その元で暮らす人々を記録することで人間が美しいと証明したいと何度も山を探索してきた人類学者の風野蒼子(稲本弥生)と後輩・原田恵太(小沼傑)が、ある日、村を探し当てる。鬼熊<オニクマ>が、下山するための食糧の準備が整うまで2人の滞在を許したことで、それぞれが決断を迫られていく。

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キャスト:
郁美カデール廣田朋菜 稲本弥生 小沼傑
小野みゆき

監督・脚本・編集・衣装・美術:速水萌巴
撮影:村松良  撮影助手:西岡徹、岩田拓磨  照明:平野礼 照明助手:森田亮  録音:佐藤美潮  整音:大関奈緒  音楽:hakobune 
ヘアメイク:林美穂、緋田真美子  助監督:堀田彩未、佐近圭太郎、宮本佳奈
制作協力:村上玲、小出昌輝  協力プロデューサー:汐田海平  配給宣伝:アルミード
© ATELIER KUSHINA 2018 / 日本 / カラー / 70分 / アメリカンビスタ / stereo

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