「クイーン」のフレディ・マーキュリーが愛したオペラの世界《カルメン》 MET ライブビューイング


映画情報どっとこむ ralph ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(MET メト )の世界最高峰の最新オペラ公演を大スクリーンで楽しむ MET ライブビューイング。
人気オ ペラ、ビゼー《カルメン》が3月8日(金)~14日(木)まで 1 週 間限定で全国公開となります。 魔性の女の虜になった瞬間、男の運命が狂い出す!
Maria Kowroski and Martin Harvey as solo dancers during the overture to Act I of Bizet’s “Carmen.”Taken at the Metropolitan Opera during the dress rehearsal on December 23, 2009.Metropolitan Opera

追えば逃げる、逃げれば追う、現代の恋愛劇にも通じる永遠の恋の法則をオペラ化した大ヒット作!様々な映画やCMで使われているヒットメロディ満載のオペラ《カルメン》は、オペラ初心者でも楽しめるオペラの代表作です。
《カルメン》は数々の映画やCMで楽曲使用されている名作。先日 第 91 回アカデミー賞にて、フレディ・マーキュリー役を演じたラミ・ マレックが主演男優賞を受賞したことでも話題の大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』では、劇中の重要 なシーンで《カルメン》のテーマ曲ともいえる〈ハバネラ〉が登場します。


ロックバンド「クイーン」のボー カルでありながら、オペラにも深く傾倒していたフレディ・マーキュリー。MET ライブビューイング《カルメン》の上映に先駆け、フレディ・マーキュリーとオペラ、ロックとオペラの世界について、音楽ライタ ーの小田島久恵さんにご執筆いただきました。

映画情報どっとこむ ralph フレディ・マーキュリーが愛したオペラの世界が躍動する《カルメン》

第91回アカデミー賞で 4 冠を獲得し、主役のフレディ・マーキュリーを演じたラ ミ・マレックは初ノミネートで見事主演男優賞を受賞した『ボヘミアン・ラプソデ ィ』。2018 年に公開されて 4 か月目に入るのに、まだ一向にフィーバーがおさまら ない『ボヘミアン…』現象だが、あの映画にはとても印象的なシーンがある。レコ ード会社の重役室に呼ばれたロックバンド「クイーン」のメンバーは、「次も『キラ ー・クイーン』のような曲を書いてヒットを飛ばせ」と命令されるのだが、フレデ ィは「次の俺たちのアルバムはオペラだ!」と言い放ち、アナログプレイヤーでビゼ ーのオペラ《カルメン》の、有名な楽曲〈ハバネラ〉をかけるのだ。重役は「今さ ら誰がオペラなんて聞くか!」と怒り狂うが、バンドメンバーたちは言うことをきか ない。フレディとクイーンがこのとき構想したアルバムは『オペラ座の夜』(1975) となり、英国や日本のみならず全米も制覇して全世界でヒットし、クイーンの名を 不朽のものにする。あの名曲『ボヘミアン・ラプソディ」もこのアルバムに収録された。

フレディはオペラを愛していた。ロック・ミュージシャンとして不動の地位を築 いた後も、歌手としての理想はつねにオペラ的な世界にあった。映画では、成功し ていくにつれ期待が高まっていく運命を恐れ「これからは絶対に、音程を外せなくなる…」と青ざめた表情で恋人の メアリーに心の内を明かすシーンがあるが、彼が目指していた歌唱の完成度は、オペラの次元に近いところにあった のだ。正確な音程、きらびやかな高音と伸びやかな発声、そして技巧的でドラマティックな表現力である。そこには 厳しさがある。ただシャウトして観客をノセればいいのではない。緻密に作った物語を聴かせること、入念なトレー ニングでパーフェクトな声を聞かせること、派手な衣装で「何か」を演じること…それは見事にオペラの美意識に通
じていた。フレディは晩年近く、当時のオペラ界の大スター歌手モンセラート・カバリエとデュエットも録音してい る。バルセロナ・オリンピックまで生きていれば、彼女とセレモニーでデュエットを歌う予定だったのだ。

ロックとオペラは遠いようで、意外に近い関係にある。オペラの 世界にもカリスマやスターたちがいて、夏の音楽祭ではスタジアム をいっぱいにしてスクリーンに顔を映し出しながら熱唱する。オペ ラの物語にはロックのライヴに負けないドラマティックな感動と胸 騒ぎがあるし、歌われているのはたいてい愛とか恋とか嫉妬のこと だ。そして、一度好きになると、どんどんのめりこんでしまうとい う点も似ている。とても中毒性の高いジャンルなのだ。CD や DVD を 鑑賞しているだけでは満足できなくなると、生の舞台を観たくなり、 オペラのさまざまな「聖地」に旅したくなる。海外に行かなくても 日本にもオペラハウスがあるし、海外の劇場も引っ越し公演で年に 何度かやってくる。私自身、オペラの公演に足を運ぶ時の気分は、 昔ロックのコンサートに行くときの気分とかぶってしまうのだ。一緒に歌ったり頭を振ったりはしないけれど。

フレディの映画の魅力は、台本のこまごまとした部分よりも、歌のシーンに集約されていたと思う。ラミ・マレッ クがアカデミー賞主演男優賞をとったのも、歌うスターであるフレディがあまりに特異で、桁外れの魅力をもってい たからではないか。オペラにも、フレディのようなシンガーがたくさんいる。信じられない高音を連続して出すテノ ール、どんな女優よりも濃厚な演技をするソプラノ、妖艶で悪い女にもなるメゾ、最強の女たらしにもなるバリトン …これらの歌手の魅力が溢れ出すのは、やはりオペラと言う物語の世界の中だ。オペラには魔法のような魔力がある。


食わず嫌いなら、まず最初に《カルメン》を見てみるのはどうだ ろう。フレディが映画でかけていたあのオペラである。退屈なシー ンがひとつもなく、すべてがハイライトシーンのような完璧なエン ターテイメントの世界で、哲学者のニーチェもこのオペラの大ファ ンだった。 〈ハバネラ〉〈 セギディーリャ〉〈 闘牛士の歌〉など、耳 にした瞬間「あっ、知ってる」と思う曲も多いはずだ。そこから、 さらに好きな歌が増えていく。エキサイティングな場面の連続に釘 付けになる。オペラ歌手がすごいのは、やはり演技しながら、素晴 らしく正確な音程で歌うことだ。高音のシーンは特に興奮する…彼 らも命懸けで究極の声を出しているのだ。それが成功するかどうか …観客も見守る。われわれも見守る。歌手の冒険が成功したときの
大きな歓声は、オペラならではのものだ。

メトロポリタン歌劇場の上演を映画館で観られる MET ライブビューイングは、『ボヘミアン・ラプソディ』に夢中になった人々が次に訪れるべきスクリーンだ。フレディが愛した世界が生き生きと躍動している。《カルメン》でドン・ホセ役を歌うロベルト・アラーニャはオペラ歌手でありながらポップスのアルバムも出すなど魅力的で、ストーリーは刺激的、映像にはダイナミックな迫力がある。「クイーンみたいな」バンドがもはやいない今、ファンが見る べきものはオペラしかない、とも思う。一年後には、お気に入りの歌手の名前をズラリと語れるオペラ・マニアになっているかも知れない。
(音楽ライター 小田島久恵)

映画情報どっとこむ ralph ★魔性の女に魅入られた男の運命やいかに! あの『ボヘミアン・ラプソディ』にも使われた傑作オペラ!
MET ライブビューイング 2018-19 ビゼー《カルメン》
2019 年3月8日(金)~14日(木) 東劇・新宿ピカデリーほか全国公開
指揮:ルイ・ラングレ
演出:リチャード・エア
出演:クレモンティーヌ・マルゲーヌ、ロベルト・アラーニャ、アレクサンドラ・クルジャック
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舞台写真(c)Marty Sohl/Metropolitan Opera

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