彼らと同じように声を上げることができる『ラッカは静かに虐殺されている』シンポジウムin東京大学


映画情報どっとこむ ralph アカデミー賞ノミネート『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマン監督作品『ラッカは静かに虐殺されている』の上映シンポジウムを東京大学にて開催。

本作は戦闘が激化し混迷を極めるシリア内戦で秘密裡に結成された市民ジャーナリストたちと「イスラム国」(IS)とのSNSを駆使した情報戦、ニュータイプの戦争と言われる闘いを、現実の出来事とは思えない壮絶な緊迫感で捉えたドキュメンタリー映画です。

上映シンポジウムは3月26日(月)東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所にて開催されました。映画の上映に続いて、東京大学大学院生の山田一竹さん、シリアで医療活動 を行った国境なき医師団の白川優子さん、中東近現代史の専門家の黒木英充さん、市民ジャーナリズムを研究対象とする李美淑さんの四人による座談会に加え、マシュー・ハイネマン監督がスカイプ出演。混迷深まるシリア情勢、戦争報道の歴史を変えたシリア内戦での市民ジャーナリズムの可能性について考察しました。

日程:2018年3月26日(月)
会場:東京大学 本郷キャンパス東洋文化研究所3階大会議室
登壇:山田一竹(東京大学)、白川優子(国境なき医師団)、黒木英充(東京外語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授)、李美淑(東京大学総合文化研究 科・特任助教)、マシュー・ハイネマン(本作監督) Skype生出演

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2018年3月26日(月)に東京大学本郷キャンパスにて開催されたシンポジウムでは、 映画『ラッカは静かに虐殺されている』の上映後、4名のシリアや市民ジャーナリズムを専門とする有識者らによる「シリア内戦での市民ジャーナリズムを考える」をテーマにした座談会が行われた。さらに本作の監督マシュー・ハイネマン氏がスカイプ出演し、登壇者や会場に集まった観客からの質問に答える形で、製作の動機や本作への思いを語った。

映画『ラッカは静かに虐殺されている』は、戦闘が激化し混迷を極めるシリア内戦で秘密裡に結成された市民ジャーナリストたちと「イスラム国」(IS)とのSNSを駆使した情報戦、ニュータイプの戦争と言われる闘いを、現実の出来事とは思えない壮絶な緊迫感で捉えたドキュメンタリー作品。

スカイプを通じて、現在新作を編集中のマシュー・ハイネマン監督へ会場から質問を投げかけた。

本作を製作したきっかけを問われた監督は

ハイネマン監督:ISについての記事を貪るように読む中で、RBSSの存在を知った。彼らの多くは学生で、最年少は18歳だった。僕はこれを世界中に伝えなくてはならないと思いました。若者たちがメディアを武器にISと闘っていると伝えたかったんだ!

と答え、「シリア内戦はアサド政権とISだけの問題ではなく、イラン、ロシア、アメリカなど、国際関係のせめぎあいである。この国際関係のせめぎあいについて、作品の中で描かれていないのはなぜか。」という質問に対しては

ハイネマン監督:私は政治的なことではなく、日常的な生活、そして彼らの人間としてのことを深く描きたかった。人間としての側面を国際社会に理解してもらいたかったんだ。

と答えた。

映画情報どっとこむ ralph 次に「常に命を狙われている彼らを撮影するということは、監督にも危険が迫ったのではないか?」との問いに

ハイネマン監督:彼らは常に 非常に危険な状態にあるんです。しかし彼らはこれ以上隠れたくないと言いました。自分たちはラッカ出身の実在の人物であると世界に示したかったんです。わが身を危険に晒しながらも自分たちが何者か公表した。ですから、この映画を撮るにあたっての私の危険よりも、彼らのことを知ってほしい。彼らがそのリスクをあえて背負い込んでまで伝えたかったことが何なのかを。


また、「本作を観た我々は、RBSSからの発信にどう応答していくべきか」という問いには

ハイネマン監督:それは観客のみなさんが答えるべき質問。わたしたちは皆スマートフォンを持っている。スマートフォンはRBSSのメンバーたちが声をあげるために使っているツールと同じだ。ジャーナリストとしての訓練を受けていない一般人でも、彼らと同じように声にあげることができるんだと世界中の人たちを励ましたかった。この映画を観て心動かされるものがあったならば、それぞれの方法でそれを伝えてほしい。私たちは”声”を伝えなくてはいけない。 この映画を作った目的の一つは、世界中の人々に映画を通してシリア内戦について知ってもらう事。この内戦の被害者は既に500万人を超えている。この映画を鑑賞した後、戦争について、またRBSSについて友人や家族に伝えてほしい

と観客へメッセージを送った。

映画情報どっとこむ ralph 本シンポジウムに参加した 4名のパネリストは、本作について次のような感想を述べた。

日本におけるシリア危機に対する関心の向上と意識変革を主たるミッションに掲げる任意団体“Stand with Syria Japan”の代表を務める東京大学大学院生の山田一竹さんは、本作の感想を

山田さん:内戦のリアリティではなく、人間のリアリティを描いた作品。 彼らは超人ではなく、僕らと何ら変わらない人間です。これは、自由と尊厳を求めて虐殺と恐怖に立ち向かい続けた、決して沈黙に逃げ込まなかった人間の物語彼らの”人間らしく死にたい”という言葉が胸に突き刺さった。シリアあるいはシリアから亡命した人はそういった事が叶わない状況に生かされている

と述べた。

国境なき医師団・手術看護師として活動されている白川優子さんは

白川さん: 私が初めてシリアに行った2012年、シリアの人は誰も戦争が始まるなんて思っていなかった。私自身、日本は戦争放棄した平和な国だと思っていたが、最近の動きを見ていると、”平和は努力して保っていかなくてはいけない”と考えるようになった。現在の平和をどのように維持していくか、また次の戦争を生み出さないためにどうするか、と考えていくことがこの映画に対する一つの応答の方法である」 と自身の体験を交えながら語った。

中東地域研究を専門とする東京外語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授の黒木英充教授は

黒木教授:この映画はいままでのドキュメンタリーと違い、RBSSとIS、アサド政権との内戦に一つの形で参加していると言える作品。これは恐らく21世紀のメディアと戦争のあり方。ラッカは二重三重四重に虐殺されている。また、ISの教育を受けた、あるいは残虐なシーンをみてきた子供たちへの再教育やリハビリにどう我々は貢献していくか。全世界が責任をもって取り組んでいかねばならない。

とシリア内戦へ国際社会が負う責任について言及した。

メディアと社会運動の研究に取り組んできた李美淑さん(東京大学総合文化研究科・特任助教)は、

李助教:ISはRBSSを恐れたわけですよね。それは、ラッカの中にいるRBSSのメンバーが映像や肉声をラッカの外にいるRBSSのメンバーへ発信し、それらを受けて世界に発信する。情報をひとつの武器として、ISと戦えることを証明しているのではないか。遠い他者の苦痛に、距離を置くのではなく、同じ人間として考え、更に構造的な責任性についても考える必要があり、それをマスメディアがいかに伝えることができるのかを考えたい。

と一つの応答の形を提示した。

映画情報どっとこむ ralph 映画『ラッカは静かに虐殺されている


公式サイト:
http://www.uplink.co.jp/raqqa/
公式Twitter:
@raqqamoviejp

次々と殺されていく仲間や家族。そして暗殺の魔の手は、自らにも忍び寄る。
ドキュメンタリー史上、最も緊迫した90分

戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦。2014年6月、その内戦において過激思想と武力で勢力を拡大する「イスラム国(IS)」がシリア北部の街ラッカを制圧した。かつて「ユーフラテス川の花嫁」と呼ばれるほど、美しかった街はISの首都とされ一変する。爆撃で廃墟と化した街では残忍な公開処刑が繰り返され、市民は常に死の恐怖と隣り合わせの生活を強いられていた。海外メディアも報じることができない惨状を国際社会に伝えるため、市民ジャーナリスト集団“RBSS”( Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)は秘密に結成された。彼らはスマホを武器に「街の真実」を次々とSNSに投稿、そのショッキングな映像に世界が騒然となるも、RBSSの発信力に脅威を感じたISは直ぐにメンバーの暗殺計画に乗り出す。
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監督・製作・撮影・編集:マシュー・ハイネマン(『カルテル・ランド』)
製作総指揮:アレックス・ギブニー(アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞『闇へ』監督
(2017/アメリカ/92分/英語・アラビア語/1:2.35/5.1ch/DCP)
配給・宣伝:アップリンク
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